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DeepSeek 創業者が語るAI時代の新戦略:AGIへの道と自制の哲学

· 52 min read
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title (情報源)

前置き+コメント

Liang Wenfeng(DeepSeek 創業者、41歳)の常識外れな流儀について、対談形式で解説している動画を AI で整理した。


AI 関連では、過去記事で小林由幸の主張を何度か取り上げてきたが、

Liang Wenfeng の

AGIへの圧倒的フォーカスと「スイカとゴマ粒」の哲学

という流儀は、発想のスケールにおいて小林のそれを数段上回る。しかもその発想を 2度、立て続けに現実化させ、成功させてきた。


以下、情報源を NotebookLM で整理した内容。

要旨

DeepSeekの創業者である‌‌リャン・ウェンフェン‌‌が、投資家向けに行った4時間にわたるスピーチの内容を解説しています。

彼は、AI時代の市場規模は既存のビジネスモデルが通用しないほど巨大であり、‌‌利益の独占やビジネス化を急ぐほど成功から遠ざかる‌‌という独自の哲学を展開しています。DeepSeekが‌‌オープンソース‌‌に拘る理由は、知能を火や電気のような公共財と捉え、他者が追随できない低コスト運用と低価格戦略で市場のスタンダードを握るためです。

彼は、マルチモーダル化よりも‌‌継続学習‌‌による知能の向上こそがAGIへの近道であると断言し、アプリの改善などの「ごま粒」のような利益は追わず、‌‌AGIという「大きなスイカ」‌‌のみを狙っています。この戦略は、従来のスタートアップの常識を覆す‌‌「真のコントラリアン(逆張り)」‌‌な思考に基づいています。

最終的に、中国製GPUのエコシステムが台頭することで米国との差は埋まり、DeepSeekはAI時代の覇者になると確信しています。

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目次

  1. 前置き+コメント
  2. 要旨
  3. DeepSeek 創業者リャン・ウェンフェンの AGI 戦略と AI 時代のビジネス哲学:ブリーフィング資料
    1. エグゼクティブ・サマリー
    2. 1. マインドセットと組織の価値観
    3. 2. AI時代における「ビジネス」の本質
    4. 3. 戦略的価格設定と経済合理性
    5. 4. AGIへのロードマップと技術思想
    6. 5. グローバル競争とハードウェアの未来
    7. 結論
  4. DeepSeek創業者リャン・ウェンフェンのAI戦略と経営思想
  5. マインドセット
    1. 普通の人々が偉業を成し遂げる「アンダードッグ」のマインドセット
    2. 「ビジネスをするな」——AI時代におけるパラダイムシフト
    3. AGIへの圧倒的フォーカスと「スイカとゴマ粒」の哲学
    4. 研究開発とブレイクスルーを促す組織環境
  6. AI時代のビジネス観
    1. AI時代のビジネス観:「ビジネスをするな」というパラダイムシフト
  7. 競争力の源泉
    1. AGIファーストから生まれる「ビジネスをしない」競争力
    2. 圧倒的な運用効率と「参入不可能な低価格」
    3. ブレイクスルーを生む非競争的な組織環境
    4. コンピューティングリソースへの極限投資
  8. AGIへのロードマップ
    1. AGI到達への明確なロードマップと「継続学習」の鍵
    2. 知能の爆発:継続学習からRSI、そしてフィジカルAIへ
    3. ワールドモデルとマルチモーダルの否定というコントラリアン戦略
  9. インフラ・GPU戦略
    1. AGI到達に向けたGPUへの「無限の渇望」とスケーリングへの確信
    2. CUDAの崩壊と国産GPUエコシステムへの歴史的転換点
    3. AGI戦略におけるインフラの意義
  10. 独自の組織・開発文化
    1. 明文化されないビジョンと「KPIゼロ」のマネジメント
    2. ブレイクスルーを生む「非ハードワーク」な研究環境
    3. 「顧客の声を聞かない」究極の非ビジネスカルチャー
    4. 「売上が減って喜ぶ」異質な価値観
  11. 情報源

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DeepSeek 創業者リャン・ウェンフェンの AGI 戦略と AI 時代のビジネス哲学:ブリーフィング資料

エグゼクティブ・サマリー

本資料は、DeepSeekの創業者であるリャン・ウェンフェン(梁文鋒)が投資家に向けて行った4時間にわたるスピーチに基づき、同氏の独自の経営哲学、AGI(汎用人工知能)へのロードマップ、およびAI時代における戦略的優位性の構築手法をまとめたものである。

主な要点は以下の通りである:

  • ビジネスの逆説: AI時代においては、利益を追求し「ビジネス」をしようとすればするほど、成功から遠ざかる。独占を目指す従来型のプラットフォーム戦略は、火や電気に匹敵する巨大なAI市場(世界GDPの10%に達すると予測)には通用しない。
  • 「AGIファースト」の徹底: 全てのリソースをAGI達成に注ぎ、C向け・B向けアプリは単なる「副産物」と位置づける。目の前の小さな利益(ゴマ)を拾うために立ち止まらず、背後の巨大な成果(スイカ)を狙う。
  • 圧倒的なコスト効率とオープンソース戦略: オープンソースを本心から推進し、他社が追随できないレベルの低コスト運用と低価格設定を実現することで、競合の参入を阻む独自の参入障壁を構築している。
  • AGIへの技術的確信: 「継続学習」こそがシンギュラリティへの鍵であり、ワールドモデルやマルチモーダル化は本質的な知能(インテリジェンス)の向上には不要であると断じる。
  • ハードウェア環境の変革: 米国との差はGPUの数のみであり、AIによるコーディングや新技術(TileLang)によって、既存のCUDA(NVIDIA)のエコシステムは急速に崩壊し、中国産チップに歴史的チャンスが到来している。

1. マインドセットと組織の価値観

リャン・ウェンフェンは、自身の組織を「普通の人の集まり」と定義し、天才集団が異を成すよりも、凡人が物語を成し遂げる「アンダードッグ(勝ち目の薄い挑戦者)」としての姿勢を重視している。

ビジョンによるマネジメント

  • KPIの否定: 数値目標(KPI)に基づく管理を一切行わず、ビジョンのみで組織を運営している。
  • 非言語化されたビジョン: ビジョンを言葉で定義するのではなく、日々の業務の進め方や姿勢そのものがビジョンを体現しているという考え方を取る。
  • オープンソースへの情熱: 同社においてオープンソースはビジョン達成の手段であり、社員は心の底からオープンソース化を喜ぶ文化がある。他社のように「義務感」で行うものとは一線を画す。

研究開発環境

  • 残業の否定: 中国スタートアップに一般的な「996(朝9時から夜9時まで、週6日働く)」を否定し、残業をさせない。
  • 50%ルール: 勤務時間の半分を自由な研究に充ててよいとするルール。ブレイクスルー(革新的発見)は、自由な環境と余裕からしか生まれないという思想に基づいている。

2. AI時代における「ビジネス」の本質

リャン氏は、AIを「火」や「電気」と同様の基盤技術と捉えており、これを独占しようとする試みは社会的に許容されず、かつ不可能であると主張している。

独占の否定と市場規模

  • 市場の巨大さ: AI市場は最終的に世界全体のGDPの10%を占める規模になると予測。これほどの規模を1社で独占することは不可能であり、利益を他者と分け合う姿勢が生存戦略として不可欠である。
  • 旧来型戦略の批判: 孫正義氏やイーロン・マスク氏のような「圧倒的なナンバーワンのプラットフォーマー」を目指す発想は、インターネット/モバイル時代の古いセオリーであり、AI時代には通用しない。
  • 自制の重要性: 全てを自分のものにしようとする欲欲が強いほど、市場から排除され、成功から遠ざかる。

「ゴマ」と「スイカ」の比喩

  • 短期的利益の無視: ユーザーの課金や特定分野のシェア(ゴマ)を追うために資金を投じることは、背後にあるAGIという巨大な利益(スイカ)を逃すことに等しい。
  • アプリ改善の優先度: ユーザーからのクレームやアプリの不完全さを、あえて修正しない場合がある。それはAGI開発という本筋において「手間でしかない」ためである。

3. 戦略的価格設定と経済合理性

DeepSeekは、利益をあえて出さない、あるいは最小限に抑えることで、他社の追随を許さない競争優位を築いている。

価格破壊による参入障壁

項目内容
価格設定の論理価格を下げれば下げるほど、社員は喜び、競合は市場から排除される。
運用の効率性他社が真似できないほど低い運用コストを実現。競合のコスト構造では赤字になる価格でも、DeepSeekは利益を出せる。
投資回収GPU投資や人件費などのコストは、API公開から10ヶ月で回収可能。
収益化の目処年間経常収益(ARR)数億ドルを見込み、ARR 10億ドルに達すれば完全な黒字化が可能。

投資判断の合理性

  • 銀行に現金を預けて2%の金利を得るよりも、NVIDIAのGPUを購入してAPIとして稼働させる方が、10ヶ月で元本を回収できるため圧倒的に経済合理性が高い。

4. AGIへのロードマップと技術思想

リャン氏のAGI(汎用人工知能)に対する考え方は、非常にフォーカスされており、独自の優先順位を持っている。

3段階の進化プロセス

  1. 継続学習(Continuous Learning): AIが人間のように経験から学び続ける能力。これが解決されれば、AIがAIを開発する「RSI(再帰的自己改善)」に突入する。
  2. RSI: 知能が爆発的に向上し、シンギュラリティ(技術的特異点)に到達する。
  3. フィジカルAI: 高度な知能が物理的な身体を持ち、人間世界の全ての仕事を代替する。

技術的取捨選択

  • LLM(大規模言語モデル)至上主義: 知能の本質は言語モデルにあると考え、画像や動画の理解(マルチモーダル)は単なるコンポーネントに過ぎないと切り捨てる。
  • ワールドモデル不要論: 継続学習さえ解ければ、物理世界の理解を目的としたワールドモデルは不要であると主張。

5. グローバル競争とハードウェアの未来

米国と中国の技術格差およびGPUエコシステムの現状について、鋭い洞察を示している。

米中格差の正体

  • 唯一の差はGPU: 人材の質に差はなく、差を生んでいるのはコンピューティングリソース(GPUの数)のみである。コンピューティングさえあれば、人材の育成もアルゴリズムの改善も追いつくことができる。
  • スケーリングの可能性: スケーリング・ロー(規模の法則)は止まっておらず、コンピューティングが足りないために止まっているように見えるだけである。

CUDAエコシステムの崩壊

リャン氏は、NVIDIAの強力な壁であったCUDAのエコシステムが以下の理由で崩壊すると予測している:

  1. AIによる模倣: AIがプログラミングを行うことで、NVIDIAが長年築いたライブラリ群を低コストかつ急速に再現できる。
  2. TileLangなどの新技術: 既存のCUDAエコシステムをそのまま利用できる新しいプログラミング言語・技術が登場している。
  3. AI専用チップへの移行: ゲーム用GPUから進化した既存の構造ではなく、AI専用の設計が主流になることで、過去の互換性(CUDA)の価値が失われる。

結論

リャン・ウェンフェン率いるDeepSeekは、従来のビジネス書に書かれているような「独占」「利益最大化」「ユーザー満足度の追求」をあえて否定することで、AI時代の新しい覇権を狙っている。AGI達成のみを絶対的な北極星とし、その他のビジネス要素を「ごま」として切り捨てるその姿勢は、AI時代における真の「コントラリアン(逆張り)」と言える。同社が継続学習の課題を解決し、RSIのフェーズに突入した時、それは単なる企業の成長を超え、文明の特異点へと繋がる可能性を秘めている。

DeepSeek創業者リャン・ウェンフェンのAI戦略と経営思想

経営哲学・ビジョンAI時代の戦略(コントラリアン的視点)オープンソースとビジネスモデルAGIロードマップと技術予測競合・組織運営へのスタンス将来の展望・市場規模
自分たちを「普通の人の集まり」と定義し、非凡な物語を達成することを追求。KPIを用いず、言語化されたビジョンよりも日々の姿勢や物事の進め方を通じてビジョンを体現する組織運営を行う。「ビジネスをしようとするほど成功から遠ざかる」という逆説的理論を提唱。AIは火や電気のような公共性の高い技術であり、独占しようとする発想自体がAI時代には通用しないと考える。本心からのオープンソース推進。他者が真似できない圧倒的な低コスト運用を実現し、競合が参入不可能な低価格設定(10ヶ月で投資回収可能)にすることで、結果的に自社APIに需要を集中させ収益化する仕組み。継続学習 → RSI(再帰的自己改善) → フィジカルAIの順で進展。継続学習が解決されればシンギュラリティに到達するとし、ワールドモデルやマルチモーダルは知能の本質的な上限とは無関係であると断言。米中格差の本質はGPUのリソース量のみ。研究重視のため残業をせず、業務時間の50%を自由な研究に充てる文化。アプリの微細な改善(ごま粒)よりも、AGIという巨大な果実(スイカ)を狙う姿勢。AI市場は将来的に世界全体のGDPの10%を占める規模になると予測。数兆ドル規模の企業を目指し、既存のインターネット時代のビジネスモデルを「アンラーニング(学習棄却)」すべきであると主張。

[1] AGIだけを目指すDeepSeek創業者が考えるAI時代の戦い方【リャン・ウェンフェン】

マインドセット

普通の人々が偉業を成し遂げる「アンダードッグ」のマインドセット

DeepSeek(ディープシーク)の創業者であるLiang Wenfeng(リャン・ウェンフェン)は、自らのチームを「ごく普通の人の集まり」と定義し、普通の人たちが偉業を達成する「アンダードッグ」の物語を体現したいというマインドセットを持っています。彼はGEの元CEOであるJack Welch(ジャック・ウェルチ)を尊敬しており、企業にとって最も重要なのはビジョンであるという考えを深く共有しています。そのためDeepSeekでは、KPIの達成といった目標管理の手法を一切とらず、明文化すらされていないビジョンや日々の姿勢そのものによって組織を運営しています。

「ビジネスをするな」——AI時代におけるパラダイムシフト

Liang WenfengのAGI戦略の根底には、「ビジネスをしようとすればするほど成功から遠ざかる」という強烈な思想があります。彼はAIの技術的インパクトを「火」や「電気」と同レベルのインフラであると捉えており、これらを一企業が独占しようとすることは不可能であり社会から許されないと考えています。AI市場は最終的に世界のGDPの10%を占める規模になると予測しており、利益を独占しようとすれば他者から攻撃されるため、オープンソース(OSS)で他者と分け合うことこそが生き残るための必須条件となります。

この発想は、Peter Thiel(ピーター・ティール)の「独占せよ」という思想や、Marc Andreessen(マーク・アンドリーセン)の「価格を上げろ」といったこれまでのインターネット時代の常識を根底から覆す、真のコントラリアン(逆張り)のアプローチです。実際にサービスの価格を大幅に下げた際、DeepSeekのチームメンバーは大喜びしたとされており、売上の増減よりも、他社が参入できないほど効率的な低価格を維持すること自体に重きを置く文化が形成されています。

AGIへの圧倒的フォーカスと「スイカとゴマ粒」の哲学

DeepSeekは、AGIの達成だけを目指すという極めてフォーカスされたマインドセットを持っています。彼らは自制を重要な戦略と位置づけており、目の前の小さな利益を「ゴマ粒」、最終目標であるAGIを「スイカ」に例えています。例えば、自社のアプリに大量のユーザーが押し寄せた際にも、ByteDance(バイトダンス)やTencent(テンセント)のように資金を投じてユーザーを囲い込み、収益化しようとはしませんでした。C向けやB向けのサービスで儲けることは全く考えておらず、それらはAGIに向かう途中で生じた副産物にすぎないという姿勢を貫いています。
OpenAI(オープンエーアイ)などがスーパーアプリ化を目指す動きすらも、Liang Wenfengの視点から見れば単なる「ゴマ拾い」に過ぎないと認識されています。

研究開発とブレイクスルーを促す組織環境

技術面において、Liang WenfengはAGI到達(シンギュラリティ)のための鍵はAIの「継続学習」にあると見定めており、Demis Hassabis(デミス・ハサビス)らが主張するワールドモデルや、マルチモーダルへの対応すらも知能の本筋ではないと切り捨てています。

このような知能のブレイクスルーを起こすために、DeepSeekは中国のスタートアップにありがちな過酷なハードワークを否定しています。残業をせず、9時から5時の勤務時間のうち半分しか会社の仕事がないという自由な環境を提供しています。これは、KPIや売上のプレッシャーがない自由な環境からこそGoogle(グーグル)のトランスフォーマーのような技術が生まれたという歴史的背景に基づくものです。ユーザーからのクレーム対応やアプリの改善といった「ビジネス的な」活動には見向きもせず、ひたすらインテリジェンスの向上だけを追求するマインドセットが組織全体に徹底されています。

AI時代のビジネス観

AI時代のビジネス観:「ビジネスをするな」というパラダイムシフト

DeepSeek(ディープシーク)の創業者であるLiang Wenfeng(リャン・ウェンフェン)は、AI時代において最も重要なビジネス戦略を「ビジネスをするな」と定義しています。彼は、AGI(汎用人工知能)の達成を目指す上で、ビジネス的な成功や利益の最大化を追求すればするほど、真の成功からは遠ざかると主張しています。この思想は、これまでのインターネット時代やソフトウェア業界の常識を根本から覆すものとして位置付けられています。

独占の否定とインフラとしてのAI

Liang Wenfengは、AIの技術的インパクトを「火」や「電気」といった人類の根源的なインフラと同列に位置付けています。そのため、一企業がAIを独占しようとすることは物理的にも不可能であり、社会からも絶対に許されないと考えています。Peter Thiel(ピーター・ティール)が提唱した「独占せよ」というアプローチや、Masayoshi Son(孫正義)、Elon Musk(イーロン・マスク)、Sam Altman(サム・アルトマン)らが目指すようなプラットフォーマーとしての市場支配や権力の集中は、AI時代においてはもはや通用しない古い発想だと一蹴しています。
AI市場は最終的に社会全体のGDPの10%を占めるほど巨大になると予測されており、その利益を独占しようとすれば他者からの攻撃を招きます。そのため、オープンソース(OSS)として技術を共有し合うことこそが、この巨大な市場で生き残るための合理的な戦略となります。

「価格を下げろ」という真のコントラリアン戦略

既存のビジネスモデルでは利益を最大化することが是とされてきましたが、DeepSeekは真逆のアプローチを取ります。Marc Andreessen(マーク・アンドリーセン)の「価格を上げろ」というスタートアップ界隈の格言に対し、Liang Wenfengは「価格を下げろ」と主張し、実際にサービスの価格を大幅に下げた際に社内で歓声が上がったとされています。
彼らは、他社が絶対に真似できないレベルの低い運用コストを実現し、他社が参入すれば赤字になるような極端に低い価格設定を行っています。これにより、無駄に利益を出すことなく投資回収を行いながら、結果的に誰もがDeepSeekのAPIを利用せざるを得ない状況を作り出しています。これは「儲けようとしないからこそ成功できる」という、新時代の真のコントラリアン(逆張り)戦略です。

「スイカとごま粒」:AGIへのフォーカスとプロダクト改善の否定

Liang Wenfengは、最終的な目標であるAGIを「スイカ」に、目先の収益化やアプリのユーザー獲得を「ごま粒」に例えています。Tencent(テンセント)やByteDance(バイトダンス)のようなスーパーアプリを目指したり、ユーザーを囲い込むためのマーケティングに資金を投じたりすることは、単なる「ごま拾い」に過ぎないと切り捨てています。
また、顧客の声を聞いてプロダクトを改善していくリーンスタートアップのような手法も、インテリジェンスの向上には直結しないため否定しています。彼にとって、C向けやB向けのサービスで儲けることはAGIに向かう過程の副産物であり、今はプロダクト開発に注力するフェーズではなく、AGIの実現に必要な「継続学習」などの研究開発だけに集中すべきだと考えています。

競争力の源泉

AGIファーストから生まれる「ビジネスをしない」競争力

DeepSeek(ディープシーク)の創業者であるLiang Wenfeng(リャン・ウェンフェン)の思想において、最大の競争力の源泉は「ビジネスをしようとしないこと」そのものにあります。AGI(汎用人工知能)への到達という「スイカ」だけを狙い、目の前の収益化やユーザー獲得といった「ごま粒」には目もくれません。ビジネス上の競争やプロダクトの細かな改善(顧客対応など)にリソースを割かず、インテリジェンスの向上のみにすべてを注ぎ込むこの極端なフォーカスが、結果として他社には真似できない技術的ブレイクスルーの土台となっています。

圧倒的な運用効率と「参入不可能な低価格」

DeepSeekは自社のモデルをオープンソース(OSS)として公開していますが、他社にビジネスを奪われることはありません。その競争力の核心は、桁違いに低い運用コストと絶妙なプライシング戦略にあります。

他社を寄せ付けないコスト構造

他社がDeepSeekのOSSモデルを自社環境でホスティングしてAPIを提供しようとしても、DeepSeekと同等の低いコストで運用することは不可能です。DeepSeekには、マネジメント面やハードウェアの調整といった物理的な制約をクリアする半端ではない技術力があり、極限まで高い効率性を実現しています。実際に、膨大なAPIプロダクトを提供する人員はわずか2名であると語られています。

利益を放棄することが最強のモート(参入障壁)となる

Liang Wenfengは「価格を下げろ」という真のコントラリアン(逆張り)戦略をとり、利益を極限まで薄く設定しています。たとえば、DeepSeekが「コスト1」で運用できるものを「価格6」で提供したとします。競合他社は同じモデルを使っても運用に「コスト20」かかってしまうため、価格6で参入すればたちまち赤字となり、物理的に競争に参加できません。
DeepSeekは稼ぎすぎることなく、投資回収を10ヶ月で終える程度のちょうどいい価格設定を意図的に行っています。これにより、競合を市場から完全に締め出し、実質的にすべてのユーザーがDeepSeekのAPIを利用せざるを得ない構造を作り上げています。

ブレイクスルーを生む非競争的な組織環境

知能の限界を突破し、AGIの鍵となる「継続学習」などのブレイクスルーを起こすための組織作りも競争力の源泉です。中国のスタートアップ市場では他社を出し抜くための過酷なハードワーク(996など)が一般的ですが、DeepSeekはこれを真っ向から否定しています。
残業を禁止し、9時から5時の勤務時間のうち半分しか会社の仕事を与えないという自由な環境を研究者たちに提供しています。KPIや売上といったビジネスのプレッシャーから研究者を完全に解放することで、Google(グーグル)でトランスフォーマーが生まれた時のような、真の技術的飛躍を生み出す土壌を意図的に設計しています。

コンピューティングリソースへの極限投資

Liang Wenfengは、アメリカのトップAIラボとDeepSeekの間に人材の質的な差はなく、唯一の差はコンピューティングリソース(GPU)の量だけであると分析しています。そのため、妥当な価格であれば市場にあるNVIDIA(エヌビディア)のGPUをすべて買い占める勢いで資金を投下し、調達した巨額の資金をわずか半年で使い切ることも辞さない構えを見せています。現金を銀行に寝かせておくより、GPUに変えて稼働させ、10ヶ月で投資回収を回し続けることこそが最大の経済合理性であると捉えており、この無限のスケールアップへの渇望が同社の物理的な戦闘力を支えています。

AGIへのロードマップ

AGI到達への明確なロードマップと「継続学習」の鍵

DeepSeek(ディープシーク)の創業者であるLiang Wenfeng(リャン・ウェンフェン)は、AGI(汎用人工知能)へのロードマップを極めて明確に定義しています。彼の見立てでは、現在のAIは、完全なコンテキストと指示を与えることさえできれば、すでに人間の知能を超えています。しかし、人間同士が共有している何十年にもわたる関係性や背景といった膨大なコンテキストを、現在のAIに与えきることは現実的に困難です。
そこで彼がAGI到達のための唯一の欠落ピースとみなしているのが「継続学習」です。新入社員が数ヶ月かけて職場の勝手を理解しパフォーマンスを上げていくように、AIが継続的に学習する能力を獲得すれば、世界中のすべての人間の仕事に取って代わる可能性が開かれると考えています。

知能の爆発:継続学習からRSI、そしてフィジカルAIへ

Liang Wenfengが描くAGIへの具体的なステップは、「継続学習」の達成が「RSI(再帰的自己改善)」を引き起こし、最終的に「フィジカルAI」へと至るという順番です。

シンギュラリティのトリガーとなるRSI

継続学習が解明されれば、AIは人間が実行できることをすべてこなせるようになります。それはすなわち、「AIが自らAIを開発する」状態(RSI)への突入を意味し、この継続学習の達成こそがシンギュラリティ(技術的特異点)に到達するトリガーになると彼は考えています。

最終形態としてのフィジカルAI

RSIが解かれた後、次にフィジカルAIの領域が解明されることで、最終的に人間世界のあらゆる物理的な仕事までもが代替されていくというのが、彼の描く完全なロードマップです。

ワールドモデルとマルチモーダルの否定というコントラリアン戦略

このロードマップにおいて特筆すべきは、他の主要なトップAIラボのアプローチを真っ向から否定している点です。Google DeepMind(グーグル・ディープマインド)のDemis Hassabis(デミス・ハサビス)らが、完全なAGIには「ワールドモデル」が必要だと主張しているのに対し、Liang Wenfengは継続学習さえ解明されればワールドモデルは不要であると断言しています。

さらに、現在のトレンドである画像や音声、動画を理解する「マルチモーダル」対応すらも、知能の上限とは無関係な「単なるコンポーネント」に過ぎないと切り捨てています。これらはAGI(スイカ)に向かう道筋において必須ではなく、本筋であるLLM(大規模言語モデル)の継続学習を通じた「インテリジェンスの向上」だけに全力を注ぐべきだとしています。
目の前の収益化やC向けアプリの開発を「ごま粒」と呼び、一切のビジネスを放棄してでも知能のブレイクスルーだけに圧倒的なフォーカスを向けるDeepSeekの組織思想は、この「継続学習のみでAGIに到達できる」という確固たる技術的ロードマップによって裏付けられています。

インフラ・GPU戦略

AGI到達に向けたGPUへの「無限の渇望」とスケーリングへの確信

DeepSeek(ディープシーク)の創業者であるLiang Wenfeng(リャン・ウェンフェン)は、アメリカのフロンティアAIラボと中国のAIラボとの間には、人材の質的な差は全く存在しないと断言しています。唯一のギャップは「GPUの数」、すなわちコンピューティングリソースの差のみであると分析しています。彼自身も強烈なスケーリング信者であり、AIの性能向上が頭打ちになるという懸念を一蹴し、それは単に計算資源が足りていないだけだと主張しています。

投資回収の合理性と「資金の全ツッパ」

AGI(汎用人工知能)という「スイカ」を手に入れるためのインフラ投資において、Liang Wenfengは妥当な価格であれば市場にあるNVIDIA(エヌビディア)のGPUをあるだけすべて買い占めたいと考えています。銀行に現金を預けてせいぜい2%の金利を得るよりも、GPUを買って稼働させれば10ヶ月で投資額を回収できるため、そちらの方が圧倒的に経済的な合理性があるとしています。
したがって、調達した巨額の資金をわずか半年で全額使い切ったとしても、それはむしろ「理想的で幸せな状況」であると語り、インフラ投資を極限まで加速させる姿勢を見せています。

CUDAの崩壊と国産GPUエコシステムへの歴史的転換点

Liang Wenfengは無尽蔵にGPUリソースを求める一方で、インフラを取り巻くエコシステムの地殻変動を見据えています。これまでNVIDIAが圧倒的な優位性を保ってきた「CUDA(クーダ)」のモート(参入障壁)が崩れ、中国の国産GPUにとって歴史的なチャンスが訪れていると指摘しており、その理由として以下の3つを挙げています。

1. AIコーディングによるエコシステムの急速な複製

AI自身が高度なコーディングを行うようになったことで、これまでのNVIDIAの周辺ライブラリやエコシステムを非常に低いコストかつ急速に模倣・再現できるようになりました。

2. 新技術「タイルラング?」による互換性の確保

DeepSeekは独自のプログラミング言語技術である「タイルラング?」をリリースしており、これを使用することで既存のCUDAエコシステムをそのまま借りて動かすことが可能になったとしています。

3. 「AI専用チップ」時代への移行

CUDAや既存のGPUは元々ゲーム用として進化してきたため、ゲームとの互換性を重視した設計になっています。しかし、AI市場がゲーム市場を圧倒する規模になるにつれ、NVIDIAやHuawei(ファーウェイ)などはAI専用のチップを作るようになり、ゲーム用GPUをベースとした既存のCUDAエコシステムはそもそもの意味を成さなくなると予測しています。

AGI戦略におけるインフラの意義

Liang Wenfengにとって、インフラやGPUへの巨額投資はビジネスや売上を拡大するためのものではなく、最終目標であるAGI到達(継続学習の解明)に向けた研究開発のサイクルを最速で回すための必須燃料です。
アプリのユーザー獲得やビジネス的な利益といった「ごま粒」には一切の関心を示さず、確保した圧倒的な計算資源を元手にインテリジェンスの限界を突破することだけに全力を注ぐという思想が、この極限のGPU戦略の根底に流れています。

独自の組織・開発文化

明文化されないビジョンと「KPIゼロ」のマネジメント

DeepSeek(ディープシーク)の創業者であるLiang Wenfeng(リャン・ウェンフェン)は、GEの元CEOであるJack Welch(ジャック・ウェルチ)の影響を強く受けており、企業運営において最も重要なのは「ビジョン」であると位置付けています。 しかし、同社のビジョンは文章として明確に言語化されているわけではなく、メンバーの日々の仕事の進め方や姿勢そのものを通じて体現されています。一般的な企業で行われるような、目標達成のためのKPI管理といった手法は一切採用されていません。
このビジョンを牽引する具体的なアクションが「オープンソース(OSS)」です。他社がいやいやながらOSSに取り組む中、DeepSeekのメンバーは心の底からOSSを信奉し、喜んでモデルを公開しています。この「心からのOSS信仰」こそが、メンバーを惹きつけ、組織を束ねる強力な求心力となっています。

ブレイクスルーを生む「非ハードワーク」な研究環境

Liang WenfengのAGI(汎用人工知能)戦略の核心は「継続学習」を解明し、知能のブレイクスルーを起こすことにあります。この目標を達成するため、DeepSeekは中国のスタートアップ業界で常識とされる「996(朝9時から夜9時まで週6日働くこと)」などの過酷なハードワークを完全に否定しています。 彼らは残業を行わず、9時から5時までの勤務時間のうち、会社から与えられる仕事は半分しかありません。これは、Google(グーグル)でTransformer(トランスフォーマー)という歴史的ブレイクスルーが生まれた際の、「売上のプレッシャーやKPIがなく自由に研究できる環境(20%ルールなど)」を意図的に再現しようとしているためです。他社を出し抜くための競争的なハードワークではなく、真の技術的飛躍を生み出すための「自由」を組織文化の根幹に据えています。

「顧客の声を聞かない」究極の非ビジネスカルチャー

DeepSeekは、AGIという「スイカ」だけを狙い、目の前の収益やユーザー獲得といった「ごま粒」には一切興味を示しません。この思想は、日々の開発文化にも色濃く反映されています。 自社のアプリにユーザーが押し寄せても、リテンション(継続利用)のための施策や課金への誘導を行わず、むしろ「ビジネスをしたくないから追い払おうとした」ほどです。アプリに不具合があっても意図的に放置し、ユーザーからのクレームや低いレビューにも一切対応しません。顧客の声を聞いてプロダクトを改善していく「リーンスタートアップ」の手法すらも、古い時代の産物として完全に否定しています。

「売上が減って喜ぶ」異質な価値観

さらに、DeepSeekのチームメンバーは、サービスの価格を1/4に下げた際に大喜びしたというエピソードがあります。通常のビジネスであれば売上が減少することはネガティブに捉えられますが、DeepSeekにおいては「価格を下げて利益を極限まで削ること」自体が他社を市場から排除する最強の戦略であると理解されているため、売上が減る(=価格を下げる)ことが社内の歓喜に直結します。
ビジネス的な成功から距離を置き、インテリジェンスの向上のみに狂信的なまでにフォーカスするこの独自のカルチャーこそが、他社には決して真似できないDeepSeekの最大の強みとなっています。

情報源

動画(38:35)

AGIだけを目指すDeepSeek創業者が考えるAI時代の戦い方【リャン・ウェンフェン】

https://www.youtube.com/watch?v=QNTzfUf_oDk

15,600 views 2026/07/29

(2026-08-02)