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Jim Rickards : 世界経済の崩壊と金高騰の予見

· 100 min read
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(全体俯瞰 : AI 生成) click で拡大

title (情報源)

前置き+コメント

Jim Rickards の最近の発言を AI で整理した。彼を取り上げるのはかなり久しぶり。


Jim Rickards は

現在のLLMはインターネット上の膨大なページを学習ソースとしているが、AIの急速な普及に伴い、不正確で低品質なAI生成データ、すなわち‌‌「スロップ(Slop / ゴミデータ)」がインターネット上に大量に排出・氾濫‌‌し始めている。AIモデルが自分自身の排出したゴミデータを次の学習に再利用するという「池を自ら汚染する(polluting the pond)」悪循環が発生しており、リカードはこれを一時的な不具合ではなく‌‌「エンジニアリング上の大災害(engineering disaster)」‌‌であると切り捨てている。

と述べ、Web のゴミ(internet slop)を批判している。本 blog も AI 生成が 95% 以上だから Slop に該当する。

AI が AI 生成の物を識別するのは困難ではないゆえ、危惧する程ではない筈。それに AI 生成物の方が、大半の人間が作成したものより品質は高い。

今後は AI にとって価値のある Web 記事は

  • a. 生身の人間が書いた稚拙で非論理的な「生の声」
  • b. 人間にしかかけない本物の体験記
  • c. コマゴマとした生活実感を綴った記事

であり、人間による評論だの考察だのは拙いので AI にとって無価値と化す。せいぜいが愚かな人間が無理して高尚ぶって吐き出した生の声として a 扱いで拾ってもらえる程度かw


以下、情報源を NotebookLM で整理した内容。

要旨

経済学者のジム・リカーズ氏は、‌‌地政学的緊張と供給網の崩壊‌‌が世界経済に深刻なシャットダウンをもたらすと警告しています。

ホルムズ海峡などの要衝が封鎖される中、各国が蓄えてきた‌‌資源の備蓄が底を突き始めており‌‌、これが本格的なインフレと景気後退の引き金になると分析しています。氏は金価格について、需要牽引型のインフレやドルの不足を背景に、‌‌1オンス1万ドルへ向かう‌‌という強気な予測を維持しています。

また、期待外れに終わる可能性が高い‌‌AIバブルの崩壊‌‌や、銀の工業的・投資的価値についても独自の視点を提示しています。最終的に、これらの要因が複雑に絡み合うことで、‌‌世界経済は極めて劇的な局面‌‌を迎えると結論付けています。

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目次

  1. 前置き+コメント
  2. 要旨
  3. 「事実扱い」と「見解」の区分け
    1. 事実扱い
    2. 見解
    3. 不明瞭
  4. 世界経済のシャットダウンとゴールドの未来:ジム・リカーズによる包括的分析
  5. ジム・リカードによるマクロ経済・地政学予測と分析
  6. 経済見通しと不況
    1. Jim Rickards?(ジム・リカード?)による経済見通しと「不況」の再定義
    2. リカードの世界経済予測全体における「不況」と他要因の連動
  7. 地政学的リスク
    1. Jim Rickards?(ジム・リカード?)が予見する地政学的リスクとその背景
    2. リカードの世界経済予測全体における地政学的リスクの連動
  8. 貴金属市場
    1. Jim Rickards?(ジム・リカード?)の世界経済予測における貴金属市場の位置づけ
    2. シルバー(銀)市場の予測と独自の価格決定要因
    3. 中国のゴールド蓄積と通貨覇権の現実
  9. インフレの構造
    1. Jim Rickards?(ジム・リカード?)が分析するインフレの構造
    2. 世界経済予測全体におけるインフレ構造の影響と連動性
  10. AI (人工知能) の懸念
    1. Jim Rickards?(ジム・リカード?)が指摘するAIバブルの構造的欠陥と懸念
    2. リカードの世界経済予測全体におけるAIバブル崩壊の影響
  11. 金融政策とFRB
    1. Kevin Warsh?(ケビン・ウォルシュ?)新議長によるFRBの劇的な変化
    2. 足元の金利政策予測とFRB内部の分裂
  12. 主要人物と組織
    1. 主要人物一覧
    2. 主要組織・勢力一覧
  13. 情報源

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「事実扱い」と「見解」の区分け

事実扱い

  1. Strait of Hormuz(ホルムズ海峡)の1日あたりの通常通行船舶数は160隻であったが、現在は1日あたり5〜9隻にまで激減していること。
  2. 半導体製造プロセスの微細エッチング環境にヘリウムが必要であり、農業用肥料(窒素系肥料や尿素など)の生産に硫黄と硝酸塩が必要不可欠であること。
  3. 2009年から2019年(世界金融危機の終わりからCOVIDパンデミックの開始前まで)の10年間におけるUnited States(米国)の年間平均GDP成長率は2.2%であったこと。
  4. 中東における戦闘(対イラン関係など)の開始から現時点で約7ヶ月が経過し、米国やChina(中国)、その他の国々がそれぞれ石油や化学原料などの「戦略備蓄」を使い果たしていること。
  5. 議長の任期を終えたJerome Powell?(ジェローム・パウエル?)元議長が、2028年の任期満了まで「理事(governor)」としての地位を辞任せずFederal Reserve?(連邦準備制度?、以下Fed?)のボードに留まっており、この「前議長が理事に留まる事態」は1949年のMarriner Eccles?(マリナー・エクルズ?)以来約80年ぶりの出来事であること。
  6. AI関連の債務(AI-linked debt)が直近5ヶ月だけで約2,360億ドルに達していること。
  7. People's Bank of China?(中国人民銀行?)の公式発表による金準備保有量は、2009年の600トンから、現在は約3,000トン近くまで増加していること。
  8. 1970年代に供給サイドのショックから始まったインフレに対し、1980年代初頭に当時のFRB議長であったPaul Volcker?(ポール・ボルカー?)が金利を20%まで引き上げてこれを退治した歴史的経緯。

見解

  1. 潜在的な経済成長率(先進国において妥当とされる約3.5%)を実際の成長率(平均2%〜2.5%)が下回り続ける状態は「恐慌(Depression)」と定義されるべきであり、この基準に基づくと、米国は2007年から、Japan(日本)は1990年からすでに長期の「恐慌」の中にあるという解釈。
  2. 各国の戦略備蓄が底を突いたため、代替手段もなく、今後グローバルな規模での経済シャットダウン(深刻な不況)が本格的に開始されるという予測。
  3. イランとの間で進行中の停戦・和平交渉は、米国側のドナルド・トランプ(Donald Trump)政権が求める条件と、イラン側の要求(800億ドルの資金凍結解除など)が互いに絶対に相容れないため、最終的に決裂して二度と復活することはないという判断。
  4. 現在米国が行っている対イラン空爆は、将来的な大規模軍事作戦(1万人以上の地上部隊を投入して高濃縮ウランを直接奪取する「Operation Aztec?(アステカ作戦?)」、または爆薬を用いず極超音速ミサイルで地下施設を永久に埋没させる作戦など)に向けた「戦域の整形(conditioning / shaping the battle space)」にすぎないという推測。
  5. ゴールドの価格は、一時的なドローダウン(調整下落)を挟みつつも、2026年または2027年までに1オンスあたり10,000ドルに達するという予測。
  6. 欧米の経済制裁下にあるRussia(ロシア)が、ウクライナでの戦費や石油決済用の「ドル」を緊急で調達する必要に迫られ、過去6ヶ月間で保有する金準備の中から数百トンを売却してドルに替えたという分析。
  7. インフレは物理的な物不足という「供給サイドのショック」から、人々のインフレ懸念に伴う「需要牽引型(デマンドプル)インフレ」へ移行する臨界点(ティッピングポイント)の極めて近くまで来ているという予測。
  8. トランプ政権の高関税政策は、関税負担を嫌う企業が米国内に直接投資(データセンターや半導体の国内生産)を行ったり、代替生産に切り替えたりするため、最終的にインフレを駆動する要因にはならないという仮説。
  9. Kevin Warsh?(ケビン・ウォルシュ?)新議長率いる新たなFed?は、ドットチャートを完全に廃止し、市場への対話を大幅に制限して、かつての情報の露出を抑えた「ブラックボックス」に近い運営へと戻るだろうという予測。
  10. 直近のFOMC?(連邦公開市場委員会?)の金利決定については、FRB内部が「インフレ懸念に基づく利上げ派(4〜5名)」と「景気後退を危惧する利下げ派(2〜3名)」に真っ二つに分裂しているため、最終的に「金利据え置き(何もしない)」という妥協案で着地するという見通し。
  11. パウエル元議長が理事の地位を辞任せずボードに居座り続けているのは、トランプ大統領の目をつつく(意地悪をする / 自由に後任理事を任命させない)ための政治的な意図に基づいているという分析。
  12. AI業界は、提供されるトークンがコストに見合うだけの十分な生産性向上をもたらさないこと、業界内でお互いに投資を還流させ合う「循環融資(Circular Financing)」に依存していること、そしてAIがネット上に排出した低品質なゴミデータ(スロップ / Slop)をAI自身が再学習する「エンジニアリング上の大災害」を抱えているため、近い将来に巨額債務のデフォルトを伴ってバブルが崩壊するという確信。
  13. ゴールドに裏打ちされた人民元がドルに代わる「基軸(準備)通貨」になるというアナリストらの予測は「ナンセンス」であり、中国には他国の中央銀行が準備資産として大量に保有できるような、健全でオープンな「債券市場(bond market)」が存在しないため実現不可能であるという見解。

不明瞭

  1. 中国の政府系主権ファンドであるState Administration for Foreign Exchange?(国家外国為替管理局?、SAFE?)が、非公表(オフバランスシート)で実物ゴールドを3,000〜4,000トン以上隠し持っており、国家保有の実質合計では米国の保有量を上回っている可能性があるという推測。
    (発言者は「そう信じるに足るあらゆる理由がある」と強く確信しているが、公式データが存在しない「非公表で不透明(non-transparent)」な情報であるため、確定した「事実扱い」なのか、主観に基づく「見解(強力な仮説)」なのかの境界線が極めて曖昧である)
  2. ゴールドの実物鉱山生産量が「フラット」であることから、世界が「ピークゴールド」の段階に突入しているかもしれないという件。
    (鉱山生産量が横ばいで推移していることや、新規の高品位な金鉱床の発見が困難を極めていることは事実として提示しているものの、それが本格的な「ピークゴールド」を意味しているかどうかについては、「私はピークゴールドだと言っているわけではないが、そうかもしれない」と発言しており、確信と留保の間で認識が揺れている)
  3. 金市場のアナリストであるAlistair Macleod?(アリスター・マクラウド?)による「中国は30,000トンの金を蓄積している」という算出についての見解。
    (リカード自身は、マクラウドの試算について「中央銀行やSAFEの政府保有分(国家の通貨を裏付けるもの)」と「中国の一般市民が持つ民間保有分(個人の結婚指輪や貯蓄など)」を混同していると否定的に分析している。しかし、中国国内にある全ゴールドの「実体としての総量」自体は20,000〜25,000トンに達している可能性については「驚かない」としており、どの部分を国家の通貨制度を左右する「実体金」として認めるべきかの判断や、その数字の定義の扱いが事実と見解の間で曖昧なまま議論されている)

世界経済のシャットダウンとゴールドの未来:ジム・リカーズによる包括的分析

本レポートは、金融アナリストであり著述家でもあるジム・リカーズ氏による、現在の世界経済、地政学的リスク、および資産市場に関する洞察をまとめたブリーフィング・ドキュメントである。リカーズ氏は、エネルギー供給の途絶、インフレの質的変化、そしてゴールドの歴史的な高騰を予測し、投資家が直面する危機的状況を詳細に分析している。

エグゼクティブ・サマリー

現在、世界経済は極めて脆弱な局面にあり、複数の要因が重なることで「世界規模のシャットダウン」が目前に迫っている。リカーズ氏の分析に基づく主要なポイントは以下の通りである。

  • 世界経済の危機: ホルムズ海峡と紅海という主要なチョークポイントの封鎖により、エネルギー(石油、天然ガス)だけでなく、半導体製造に不可欠なヘリウムや肥料の原料となる硫黄などの供給が滞っている。戦略的備蓄が底を突きつつある今、実体経済への深刻な影響が顕在化しようとしている。
  • インフレの転換点: これまでの供給サイドのショックから、人々の心理に基づいた「需要牽引型(デマンド・プル)」インフレへと移行する臨界点にある。これは制御が極めて困難であり、さらなる金利上昇を招く。
  • ゴールド価格の予測: ゴールドは一時的な下落(ドローダウン)を経て、2026年から2027年までに1オンス10,000ドルに達すると予測される。現在の価格変動は、商品市場における歴史的なパターン(50%のドローダウン)に合致しており、絶好の買い場とされている。
  • AIバブルの崩壊: AI産業は、莫大な投資と負債に対して十分な収益や生産性の向上を示しておらず、また「スロップ(質の低いアウトプット)」によるインターネットの汚染が進行している。このバブルは近い将来崩壊する可能性が高い。
  • FRBの変容: ケビン・ウォーシュ氏による新体制下で、FRBは不透明性を増し、フォワードガイダンスやドットチャートといった情報の公開を縮小する方向に進む。
  1. 経済状況の再定義:景気後退か、大恐慌か

リカーズ氏は、現在の米国および世界経済の状態を単なる「景気後退(リセッション)」ではなく、「大恐慌(デプレッション)」として定義している。

  • 大恐慌の定義: 潜在成長率(米国では約3.5%)を継続的に下回る成長状態を指す。マイナス成長である必要はなく、潜在能力とのギャップが失われた富となる。
  • 期間: 米国は2007年から、日本は1990年から長期的な大恐慌状態にある。2009年から2019年の米国の平均成長率は2.2%に過ぎなかった。
  • 技術的景気後退の予兆: イランとの戦争状態やエネルギー価格の高騰により、二四半期連続のGDPマイナス成長という「技術的景気後退」が近く発生する可能性が高い。
  1. 地政学的リスクと供給網の崩壊

中東における紛争の激体化は、エネルギー市場のみならず、広範な産業に壊滅的な打撃を与える。

チョークポイントの現状

項目正常時現状
ホルムズ海峡の通航量約160隻/日5~9隻/日
主な影響原油、天然ガス、硫黄、ヘリウム備蓄の枯渇による供給停止
  • 戦略的備蓄の限界: これまで中国や米国は戦略的な備蓄(石油、窒素肥料など)を切り崩して対応してきたが、すでにその限界に達している。
  • クリティカルな原材料:
    • ヘリウム: 半導体製造のエッチング工程に不可欠。
    • 硫黄・硝酸塩: 肥料製造の主要原料であり、農業生産に直結する。
  • 軍事的エスカレーション: 米国による「バトルスペースの条件付け(空爆)」は進行中であり、今後、イランの高濃縮ウラニウムを直接排除するための大規模な軍事作戦(「オペレーション・アズテック」と呼称)や、極超音速ミサイルの使用に発展する可能性がある。
  1. インフレの質的変化

インフレは現在、制御可能な段階から制御不能な段階へと移行しつつある。

  1. 供給サイドのインフレ: サプライチェーンの崩壊やエネルギー価格上昇によるもの。これは失業率の上昇や消費の抑制を通じて自己修正される傾向がある。

  2. 需要牽引型(デマンド・プル)インフレ: 「物価が上がる前に買っておこう」という消費者の心理的変化によるもの。これが始まると、金融政策での抑制は極めて困難になる。リカーズ氏は、現在この「転換点」の直前にいると警告している。

  3. ゴールドとシルバーの市場展望

リカーズ氏は、ゴールドの長期的強気姿勢を崩していない。

ゴールド価格の分析

  • ドローダウンの必然性: 商品相場には「50%のドローダウン(下落)」がつきものである。1,800ドルをベースとして5,300ドルまで上昇した後の現在の調整は、数学的・歴史的に見て想定内である。
  • 10,000ドルへの道: 価格が上昇するほど、次の1,000ドルの節目に到達するのは容易になる(4,000ドルから5,000ドルへの上昇は25%増だが、9,000ドルから10,000ドルは11%増に過ぎない)。
  • ドルの不足: 石油価格が上昇すると、決済に必要なドルが不足するため、中央銀行やトレーダーがドルを確保するためにゴールドを売却する動きが出る。これが現在の一時的な価格抑制要因となっている。

シルバーの役割

  • 二重のベクトル: シルバーは「通貨としての側面」と「産業資材としての側面」を持つ。
  • 産業需要: ミサイル、ドローン、電子機器などの国防支出の増大がシルバーの需要を強力に支える。ゴールドの上昇に遅れて連動する傾向があるため、今後高いパフォーマンスが期待される。
  1. AIバブルの構造的欠陥

AI(人工知能)市場については、極めて否定的な見解が示されている。

  • 収益モデルの不在: 膨大なインフラ投資(GPUやデータセンター)に対して、生産性の向上は限定的であり、ユーザーは高い利用料(トークン価格)を支払うことに消極的である。
  • 循環取引: チップメーカーとサービスプロバイダーが互いに出資し合い、見かけ上の需要を創出している「循環型ファイナンス」の側面がある。
  • データの汚染(スロップ): AIが生成した質の低いコンテンツがインターネット上に氾濫し、それをさらにAIが学習することで、モデルの精度が低下する「エンジニアリングの災害」が起きている。
  1. 金融政策とFRBの新体制

FRB(連邦準備制度理事会)の運営方針は、今後大きく変化する。

  • ケビン・ウォーシュ体制: ウォーシュ氏は、過去のFRBのように「沈黙」を重視し、市場への過剰な情報提供を控える可能性がある。ドットチャートや詳細な声明文の廃止が予測される。
  • ジェローム・パウエルの残留: パウエル氏は議長退任後も2028年まで理事として留まる意向を示している。これはトランプ政権への抵抗(空席を作らせないための措置)であり、内部的な対立を招く可能性がある。
  • 利上げの可能性: 深刻なインフレを背景に利上げを主張する派閥と、景気後退を懸念して利下げを求める派閥が拮抗しており、当面は据え置きが続くものの、最終的にはインフレが加速する。
  1. 中国の金保有と準備資産の真実

中国の金蓄積戦略についても重要な指摘がある。

  • 公表値と実数値: 中国人民銀行の公表値は約3,000トンだが、非透明な「国家外匯管理局(SAFE)」などが保有する分を合わせると、少なくともその倍以上(6,000トン以上)を保有している可能性が高い。
  • 民間保有の誤解: 中国やインドの民間人が保有する数万トンの金(宝飾品など)は、国家の準備資産とは別物であり、通貨の裏付けとしては機能しない。
  • リザーブ・アセットの欠如: 人民元が基軸通貨になれない最大の理由は、中国に十分な規模と透明性を持った債券市場が存在しないことである。基軸通貨とは「基軸資産(債券)」の通貨単位に過ぎない。

結論: 供給網の崩壊、インフレの質的変化、そして主要資産の価格変動はすべて繋がっている。リカーズ氏は、目前のボラティリティに惑わされず、実物資産(ゴールド・シルバー)を確保し、迫り来る経済的・地政学的ショックに備えるべきであると結論づけている。

ジム・リカードによるマクロ経済・地政学予測と分析

資産またはトピック将来の予測値・状態予測のタイムライン主な変動要因・触媒分析またはリスクの詳細
金(ゴールド)1オンスあたり10,000ドル2026年まで(またはそれより早く)需要牽引型インフレ、中央銀行の需要増、供給不足、中東情勢の緊迫化。現在は供給側のショックだが、消費者の期待変化により需要牽引型へ移行する「臨界点」が近い。短期的にはドル不足で3,600ドル付近まで下落する可能性もあるが、そこを底値として急騰すると分析。
米国経済(景気後退)深刻な不況(Depression)下でのテクニカルな景気後退継続中、および近い将来潜在成長率を下回る成長、エネルギー価格の高騰、供給網の遮断。2007年から「不況」状態にあるとの定義。ホルムズ海峡閉鎖に伴うヘリウムや硫黄の不足が半導体・肥料生産を打撃し、世界的な経済停止を招くリスクを警告。
原油(ブレント原油)1バレルあたり100ドル以上(現物は120ドル以上)近い将来ホルムズ海峡および紅海の封鎖、中東での軍事行動の拡大。先物価格よりも現物(ウェット・カーゴ)の価格が大幅に上昇。供給網の寸断がインフレを悪化させる。米国による対イラン軍事作戦(アステカ作戦等)の可能性も視野。
銀(シルバー)金の上昇に伴う追随と価格上昇金の上昇サイクルと同期軍需産業(ミサイル、ドローン)の需要、エレクトロニクス需要、貴金属需要。軍事支出の増大による工業的需要に加え、金の価格急騰に牽引される形で良好なパフォーマンスを示すと予測。
AI(人工知能)関連株バブルの崩壊、多くの企業の破綻近い将来(バブルの終盤)収益モデルの欠如、過剰な債務、AI学習データの質の低下(スロップ)。AIは現時点でコストに見合う生産性向上に至っていない。企業間の循環的な投資で支えられているが、収益未達と債務不履行によりバブルが弾けると予測。
FRB(連邦準備制度)の金融政策情報の透明性の低下、ドットチャートの廃止次期議長(ケビン・ウォーシュ氏等)の就任以降運営方針の変更、フォワード・ガイダンスの否定。次回会合は据え置きを予想。新議長就任後は声明文が簡素化され、市場への情報発信が抑制されることで不透明感が増すと分析。

[1] Jim Rickards Warns: Global Shutdown Is Near

経済見通しと不況

Jim Rickards?(ジム・リカード?)による経済見通しと「不況」の再定義

恐慌(Depression)と景気後退(Recession)の概念的相違

Jim Rickards?(ジム・リカード?)は、一般的に混同されがちな‌‌「景気後退(Recession)」と「恐慌(Depression)」を明確に区別‌‌して分析している。

米国における典型的な景気後退の定義は、GDPが2四半期連続でマイナス成長を記録することである。しかし、彼が予見する「恐慌」とは、‌‌経済成長率が潜在的な成長力(潜在トレンド)を下回ったまま、崩壊するわけでも潜在成長力に戻るわけでもない、低空飛行の状態が持続すること‌‌を指す。

先進国の潜在的な経済成長率を3.5%と仮定した場合、実際の平均成長率が2.0%〜2.5%にとどまる状態がまさにこれに該当する。この「本来あるべき成長」と「実際の成長」とのギャップは、失われた巨額の富を意味する。この定義に従うと、‌‌United States(米国)は2007年から、Japan(日本)は1990年からすでに長期的な「恐慌」の中にあり‌‌、例えば2009年から2019年までの米国の年間平均成長率は2.2%にとどまっている。

地政学リスクと資源枯渇が誘発する「テクニカルな不況(景気後退)」

この長期的な「恐慌」の底流の中で、物理的な要因により‌‌短期的な「テクニカルな景気後退(不況)」が極めて高い確率で引き起こされる‌‌とJim Rickards?は警告する。

その主因は、中東地域での戦争とそれに伴う主要な海上チョークポイントの閉鎖である。Strait of Hormuz(ホルムズ海峡)の事実上の閉鎖に加え、Houthi?(フーシ派?)によるRed Sea(紅海)の攻撃は、Suez Canal(スエズ運河)の閉鎖に匹敵する大打撃を与えている。通常は1日160隻あったホルムズ海峡の船舶航行は、現在5〜9隻に激減している。これにより、世界経済のサプライチェーンに不可欠な原材料が深刻な供給停止に陥る:

  • ‌ヘリウム‌‌: 半導体製造プロセスの微細エッチングに必要なガスであり、これが途絶えれば半導体産業の一部が完全にシャットダウンする。
  • ‌硫黄と硝酸塩(尿素など)‌‌: 農業に不可欠な窒素系肥料の製造プロセスに不可欠な基礎化学原料である。

世界各国は、China(中国)の石炭増産や米国からの石油融通などの「代替手段」、あるいは各国の「戦略備蓄」を取り崩すことで、これまで破滅的な崩壊を先延ばしにしてきた。しかし、戦闘開始から約7ヶ月が経過した現在、これらの備蓄は限界まで使い果たされており、‌‌世界経済の本格的なシャットダウン(不況)が差し迫っている‌‌。


リカードの世界経済予測全体における「不況」と他要因の連動

供給サイドから需要サイドへ移行する「インフレの臨界点」

不況をさらに深刻化させるのが、供給不足と燃料高騰によるインフレーションである。燃料(特にトラック輸送を支えるディーゼル)の高騰はすべての物品とサービスの価格に波及し、人々の可処分所得を圧迫して失業や解雇を招き、不況を深化させる。

さらに、インフレが「供給サイドの混乱」から、人々の心理や行動変容を伴う「需要牽引型(デマンドプル)インフレ」へと移行する臨界点(ティッピングポイント)が近づいている。人々が「価格が上がる前に今すぐ買おう」と行動し始めると、インフレの抑制は金融政策のコントロールを超えて極めて困難になり、金利高騰を招く。

金(ゴールド)と銀(シルバー)の急騰シナリオ

この経済崩壊とインフレのシナリオは、‌‌ゴールド価格が2026年または2027年までに1オンスあたり10,000ドルに達する‌‌という彼の主要な予測に直結している。

足元でゴールド価格が一時的に急落したのは、Jim Rogers(ジム・ロジャーズ)が指摘した「50%のドローダウンを伴わずに高値に達するコモディティはない」という市場原則や、Benoit Mandelbrot?(ベノワ・マンデルブロ?)のフラクタル幾何学的なボラティリティモデル(スケール不変性)で説明可能である。石油価格が急騰したことで世界的な「ドル不足(ドル・ショート)」が発生し、Russia(ロシア)や他国の中央銀行・投資家が石油購入や制裁対策の決済用ドルを得るために一時的にゴールドを売却したことが下落の引き金となった。

しかし、世界的なゴールドの採掘量が横ばいであること、また米国による資産凍結リスクから「米国債回避」の動き(安全資産としての実物ゴールド需要)が強まっているファンダメンタルズは変わらない。需要牽引型インフレが始まれば、ゴールドは急騰局面に入る。Silver(シルバー)もこれに連動し、特にミサイルやドローンなどの「軍事防衛支出」による強い産業需要を背景に上昇するとされる。

その他の世界経済予測との交差

リカードはまた、この経済崩壊の文脈において、以下の予測を提示している:

  • ‌Fed?(連邦準備制度?)のブラックボックス化と対立‌‌: 新議長となるKevin Warsh?(ケビン・ウォルシュ?)のもと、Fedは「ドットチャート」など誤りやすい将来予測の開示を廃止・短縮し、市場との対話を制限する。一方で、Jerome Powell?(ジェローム・パウエル?)はドナルド・トランプ(Donald Trump)政権に対抗して2028年の任期終了まで理事に留まり、抵抗を続ける。利上げ派と利下げ派が対立する中で政策は膠着し、不況とインフレが同時に悪化する事態を招く。
  • ‌AIバブルの崩壊‌‌: OpenAI(オープンAI)やAnthropic(アンスロピック)を巻き込むAI分野には、巨額の債務(直近5ヶ月で約2360億ドル)が積み上がっている。しかし、膨大な capex(設備投資)を回収できるほどの生産性向上や収益化の目処は立っておらず、巨大IT企業同士の相互投資による「循環融資」で保たれているにすぎない。ネット上の「スロップ(AIが生成した品質の悪いデータ)」の氾濫による学習品質の劣化(エンジニアリング上の災害)もあり、近い将来にAIバブルが崩壊し、デフォルトが多発して深刻な市場への衝撃となる。
  • ‌中国の金蓄積と基軸通貨化の限界‌‌: ChinaはPeople's Bank of China?(中国人民銀行?)や非公開のState Administration for Foreign Exchange?(国家外国為替管理局?)を通じて莫大な実物ゴールドを蓄積している。Alistair Macleod?(アリスター・マクラウド?)が提示する30,000トンの蓄積予測については、中央銀行の保有分と民間(個人の貯蓄など)の保有分を混同している可能性を指摘している。しかし、中国には基軸通貨を成立させるために不可欠な健全な「債券市場(reserve assets)」が存在しないため、ゴールドに裏打ちされた人民元が米ドルに代わる基軸通貨になる予測は「ナンセンス」であり、実現しないと結論づけている。

地政学的リスク

Jim Rickards?(ジム・リカード?)が予見する地政学的リスクとその背景

中東における戦争と主要チョークポイントの封鎖

Jim Rickards?(ジム・リカード?)は、Alex Adrenov?(アレックス・アドレノフ?)との対談の中で、世界経済を物理的なシャットダウンへと追い込む最大の引き金として、中東における地政学的衝突を挙げている。特に、‌‌Strait of Hormuz(ホルムズ海峡)の事実上の閉鎖‌‌と、‌‌Houthi?(フーシ派?)によるRed Sea(紅海)での船舶攻撃‌‌は、世界経済のサプライチェーンに致命的な打撃を与えつつある。
通常であれば1日あたり160隻が通航していたホルムズ海峡の船舶航行は、現在は1日あたり5〜9隻という極微量な規模にまで激減している。さらに紅海での攻撃は、事実上のSuez Canal(スエズ運河)閉鎖に匹敵する大打撃である。Houthi?やイランは、武力によってすべての船舶を物理的に遮断する必要はなく、保険の適用、法的な問題、乗組員の生命へのリスクを発生させるために「週に1〜2隻を爆破する」だけで、航行を自発的に停止させることが可能であるからだ。
トランプ大統領は「Houthi?を石器時代(Stone Age)に爆撃で逆戻りさせる」と主張しているが、彼らは元々洞窟や遊牧生活を送る「すでに石器時代にいる」存在であり、サウジアラビアが10年間戦っても効果がなかったことを踏まえると、空爆のみで彼らを制圧することは不可能であると指摘している。

停戦交渉の決裂と米国による「戦域の整形」

中東における停戦交渉は、カタール?やトルコ?などで提案が浮上しているものの、実質的に交渉は決裂しており、再び軍事行動が激化している。イラン側が署名する条件(800億ドルの凍結資産解除、経済制裁解除、ホルムズ海峡の支配権、中東からの米軍撤退)と、Donald Trump(ドナルド・トランプ)政権が求める条件(無償でのホルムズ海峡開放、高濃縮ウランの完全放棄、国際査察下での核兵器開発中止、その後の制裁緩和)は、互いに絶対に受け入れられない内容だからである。
結果として平和的な合意は完全にテーブルから消え去り、米国による空爆とイラン側からの反撃(ヨルダンやサウジアラビアの米軍基地・重要インフラへの攻撃)はフルスケールで再開されている。ここで重要なのは、現在行われている米国の爆撃自体は、単独で政権交代やウラン放棄を実現するためのものではなく、軍事用語でいう‌‌「戦域の整形(conditioning / shaping the battle space)」‌‌、すなわちこれから訪れるはるかに大規模な軍事作戦のための地ならし・ターゲットの軟化プロセスにすぎないという点である。

大規模軍事作戦への発展:ウラン強奪か極超音速ミサイルか

泥沼の「不毛な戦争(forever war)」を嫌うトランプ政権が平和的妥協もできず、現状維持も持続不可能となった場合、残された道は‌‌軍事作戦の圧倒的なエスカレーション(本格的な侵攻)‌‌のみである。Jim Rickards?は、米国が実施し得る2つの壊滅的な作戦シナリオを提示している:

  1. ‌Operation Aztec?(作戦名「アステカ」?)‌‌: 生贄のまだ鼓動している心臓を直接胸から抉り出すアステカ族の儀式のように、イランから高濃縮ウランを直接強奪する作戦である。核の脅威の心臓部を直接抜き取ってしまえば、イラン政権のその後の動向は問題ではなくなる。ただし、この作戦には1万人以上の「地上部隊(boots on the ground)」、陸軍工兵隊、特殊部隊、航空支援などを投入して強固な防衛境界線を確立する必要があり、激しい戦闘と多大な死傷者を伴う。
  2. ‌極超音速ミサイル(Hypersonic Missiles)による施設の永久埋没‌‌: ロシアの極超音速ミサイル技術をモデルにした、爆薬を一切搭載せず、超高密度の金属コアのみを時速10,000マイルで衝突させる超高速兵器の使用である。その衝突は核兵器を使用せずとも「局所的な大津波」に匹敵する激甚な地殻変動(地震効果)を引き起こし、イランの山岳地下深くに建設された核施設を、イラン人自身も二度と掘り起こせないレベルまで完全に埋没・破壊する。

リカードの世界経済予測全体における地政学的リスクの連動

サプライチェーンのシャットダウンと世界的「飢餓」の危機

この中東の衝突に起因する地政学的リスクは、リカードの「不況(テクニカル・リセッション)」と「供給ショック型インフレ」の予測に直接連動している。ホルムズ海峡の閉鎖により、石油や液化天然ガスといったエネルギー資源のみならず、以下の重要な工業・化学原料の供給が完全に断絶する:

  • ‌ヘリウム‌‌: 半導体製造プロセスにおける微細なエッチング環境に必要なガスであり、これが枯渇すれば世界的な半導体産業の一部が物理的にシャットダウンする。
  • ‌硫黄と硝酸塩‌‌: 農業用肥料(特に窒素系肥料や尿素)の生産プロセスに必須の基礎化学原料である。

世界各国は、これまでの約7ヶ月間、中国による石炭代替や米国からの石油融通、さらには「戦略備蓄」の取り崩しによってこの供給制限の影響を先延ばしにしてきた。しかし、これらの備蓄は完全に使い果たされており、これ以上の代替手段が存在しないため、南半球の植え付けシーズン(9月開始)を前にして、極端なケースでは‌‌世界的な「大量の飢餓(mass starvation)」‌‌と、それに伴う本格的な世界経済のシャットダウン(不況)が差し迫っている。
この物理的な物不足に、ディーゼルなどの燃料高騰による輸送コストの上昇が重なることで、経済全体に急激なインフレが発生し、人々の購買力を奪って深刻な景気後退をもたらす。

「米ドルの武器化」に対する中央銀行のゴールドシフト

地政学的衝突によるもう一つの重要な構造変化は、‌‌「米ドルの武器化(weaponization of the dollar)」に対する他国の恐怖‌‌である。欧州諸国がロシアの資産を盗もう(steal)としたり、イランの資産が米国政府によって凍結されたりしている現実を前に、世界中の多くの国々が「米国が自国の政策を気に入らないという理由だけで、US Treasury(米国財務省)やFed?(連邦準備制度?)の台帳上で自国資産をいつでも凍結し得る」という深刻なリスクを認識し始めている。
この「制裁リスク」を回避するための究極の安全資産(safe haven)として、各国中央銀行や主権者による実物ゴールド(ゴールドバー)への需要が構造的に急増している。石油の急激な高騰に伴う一時的な「ドル不足」を解消するため、ロシアや一部の投資家が戦費や決済用ドルの調達目的で一時的に数ペンドメトリックトンのゴールドを売却し、これが足元の価格急落を招いたものの、これはあくまで一時的な「流動性確保」の動きにすぎない。ゴールドの採掘量が世界的に横ばいである中、このドル回避という地政学的リスクに裏打ちされた根本的需要は極めて強固であり、これがゴールド価格を1オンスあたり10,000ドルへと急騰させる最大の推進力となる。

軍事防衛支出の激増によるシルバーの急騰

中東の危機やロシア・ウクライナ戦争といった地政学的リスクの長期化・激化は、米国のみならず欧州(ドイツなど)における‌‌「軍事防衛支出」の大幅な拡大‌‌をもたらしている。この地政学的背景から、ドローン、各種ミサイル(巡航ミサイル、極超音速ミサイル、防空用の迎撃ミサイルなど)といった軍事用ハードウェアの生産が急速に拡大している。
そして、優れた貴金属であると同時に、ミサイルや軍事機器、さらにはデータセンターやサーバーといった高度なインフラ分野で不可欠な工業用原材料でもある‌‌Silver(シルバー)‌‌は、この「防衛支出の急増」という強力な産業的ベクトルに支えられ、ゴールドの上昇トレンドに追随する形で劇的な価格高騰を遂げることになると予見されている。

貴金属市場

Jim Rickards?(ジム・リカード?)の世界経済予測における貴金属市場の位置づけ

ゴールド(金)価格10,000ドルへの道筋と価格変動のメカニズム

Jim Rickards?(ジム・リカード?)は、Alex Adrenov?(アレックス・アドレノフ?)との対談の中で、‌‌ゴールド価格が2026年または2027年までに1オンスあたり10,000ドルに達する‌‌という予測を確信を持って維持している。足元では、ゴールドが一時的に1オンス5,300ドルの史上最高値付近から3,900ドル近辺まで下落(約25%の下落)したものの、これは予測の破綻を意味するものではないと分析する。
この下落は、伝説的なコモディティトレーダーであるJim Rogers(ジム・ロジャーズ)がかつて語った「50%のドローダウンを伴わずに急騰するコモディティはない」という市場の経験則に合致している。また、Benoit Mandelbrot?(ベノワ・マンデルブロ?)が提唱したフラクタル幾何学における「スケール不変性(scale invariance)」の観点からも、かつての1,800ドルのベースラインから5,300ドルまでの上昇幅に対して40〜50%程度の引き戻し(3,600ドル付近が強固な底になり得る)が生じることは、数学的・歴史的に説明可能なボラティリティの範囲内である。

ゴールド一時下落の地政学的・マクロ経済的要因

ゴールドの一時的な下落を誘発した物理的な引き金は、世界的な‌‌「ドル不足(dollar shortage)」‌‌である。
中東危機などにより原油価格が急騰した結果、石油決済に必要な米ドルの需要が世界中で激増した。この急激なドル需要に対して銀行の融資が滞ったため、各国の中央銀行や主権者、投資家は「ゴールドを売却してドルを確保する」動きを余儀なくされた。特に、欧米からの制裁下にあるRussia(ロシア)は、ウクライナでの軍事資金や決済用ドルを確保するため、それまで2,600トンにまで蓄積していたゴールドの一部(数百トン)を売却せざるを得ず、これがゴールド価格の一時的な下押し圧力となった。

10,000ドル急騰を支える強固なファンダメンタルズ

一時的なドローダウンを乗り越えた後、ゴールドは急激な上昇相場に入ると予測されている。その理由は以下の強固な要因に基づいている:

  • ‌実物供給の限界‌‌: 世界の実物ゴールドの鉱山生産量(mining output)は頭打ち(フラット)の状態にあり、新規の供給が限られている。
  • ‌ドルの武器化に対する防衛需要‌‌: 欧州諸国がロシアの資産を実質的に没収しようとしたり、イランの資産が米国によって凍結されたりしている現状を目の当たりにし、世界中の国々が「米国主導の決済網(米国債)に資産を置いておくことの制裁リスク」を強く認識し始めている。このため、中央銀行や主権者による、差し押さえの不可能な「実物ゴールド」への退避(米国債回避)需要は構造的に強まり続けている。
  • ‌需要牽引型(デマンドプル)インフレへの移行‌‌: これまでゴールドはインフレではなく安全避難先需要で動いてきたが、中東チョークポイント(ホルムズ海峡や紅海)の閉鎖による物不足と燃料(ディーゼル)高騰がサプライチェーンを直撃し、インフレは供給サイドの混乱から「人々の心理的なインフレ期待」を伴う需要サイドへと移行する臨界点(tipping point)にある。この需要牽引型インフレが本格化すれば、金利の急騰とともに、ゴールド価格は一気に高騰し、10,000ドルの大台へ到達する。その際、基準価格が高くなるほど、各千ドルの節目(9,000ドルから10,000ドルなど)への上昇率(%)は小さくなるため(わずか11%の上昇に過ぎない)、後半の上昇スピードは極めて迅速になる。

シルバー(銀)市場の予測と独自の価格決定要因

ゴールドとの本質的相違:産業用と貴金属用の二重ベクトル

シルバーは、富の保存手段(貨幣)としての価値がほぼ全てであるゴールドとは異なり、‌‌「産業用原材料」と「貴金属(投資・貯蓄)」の二重のベクトル‌‌を有しているため、その分析はより複雑である。しかし、Rickardsはこれら2つのベクトルがともに力強く上を向いていることから、シルバーの将来的な上昇を確実視している。

地政学に伴う軍事・防衛支出の激増(産業用ベクトル)

中東の緊迫化やロシア・ウクライナ戦争などの地政学的リスクは、米国やドイツを含むヨーロッパ全体で‌‌「軍事防衛支出」の大幅な拡大‌‌をもたらしている。これにより、ドローン、各種ミサイル(巡航ミサイル、極超音速ミサイル、迎撃ミサイルなど)、およびデータセンターやAI用サーバーなどの生産が急速に立ち上がっている。これら最先端の防衛兵器やインフラのハードウェア生産には、導電性に優れた貴金属であるシルバーが不可欠であり、この強力な産業需要がシルバー価格の大きな支えとなる。

ゴールドとの連動性(貴金属ベクトル)

投資や富の保存という貴金属としてのベクトルにおいて、シルバーは歴史的にゴールドの価格動向を追いかける(ラグを伴う)傾向がある。Rickardsが予見する地政学的クラッシュやインフレによってゴールドが10,000ドルに向けて本格的に急騰し始めれば、シルバーもその強力な上昇トレンドに追随して高騰局面に入る(along for the ride)と考えられている。


中国のゴールド蓄積と通貨覇権の現実

中国による非公開の金蓄積

China(中国)は長年にわたり大規模にゴールドを蓄積しており、People's Bank of China?(中国人民銀行?)の公表している公式備蓄(約3,000トン)に加え、非公開の政府系ファンドであるState Administration for Foreign Exchange?(国家外国為替管理局?、SAFE?)のオフバランスシート上にも同等以上のゴールド(3,000〜4,000トン以上)を保有していると推測される。これにより、中国の国家保有ゴールドの実質合計は米国の保有量を上回る可能性がある。
なお、一部の専門家(Alistair Macleod?(アリスター・マクラウド?))が提示する「中国は30,000トンのゴールドを保有している」という推計値について、Rickardsは中央銀行・政府保有分と、民間(一般市民の宝飾品や個人貯蓄)保有分を混同している可能性があると指摘する。民間がゴールドをいくら保有していても、それは国家の通貨を裏付ける政府保有金と同義ではないからである。

「ゴールド裏付け人民元」による米ドル代替の限界

中国はShanghai(上海)を実物ゴールド取引の中心地にするなど、レバレッジ取引(ペーパーゴールド)を排除して現物決済を推進している。しかしRickardsは、‌‌「ゴールドに裏打ちされた人民元がドルに代わる基軸通貨になる」という予測を「ナンセンス」として一蹴‌‌する。
真の「基軸通貨(reserve currency)」というものは存在せず、実際にあるのはその通貨で建てられた「準備資産(reserve assets)」である。中央銀行は準備資産としてドルの「現金」を保管しているのではなく、米国債や欧州の公債(ドイツ国債やイタリア国債など)を保有している。中国には、準備資産として他国に大量保有されるに足る健全で開かれた「債券市場(bond market)」が存在しないため、人民元が準備通貨の役割を担うことは制度上不可能である。

インフレの構造

Jim Rickards?(ジム・リカード?)が分析するインフレの構造

インフレを引き起こす「3つの主要因」

Jim Rickards?(ジム・リカード?)は、インフレが発生するメカニズムを、単一の要因ではなく複数のフェーズと要因が連動する構造として説明している。彼によれば、インフレには主に以下の3つの原因が存在する。

  1. ‌供給サイドの崩壊(Supply-side breakdown)‌
    サプライチェーンが寸断されることで、物理的なモノの不足(供給制限)が生じ、店頭の棚が空になることで価格が押し上げられる現象。
  2. ‌エネルギー(燃料)価格の高騰によるコスト転嫁‌
    多くの消費者はガソリンスタンドでの給油価格(ガソリン代)に目を奪われがちだが、本質的な影響はそこではない。経済活動におけるすべての物資やサービスは、トラックをはじめとする輸送機関によって移動しており、これらはディーゼル燃料で動いている。ディーゼル価格が上昇すると、配送業者は燃料費の上昇分をカバーするために、輸送するすべての物資やサービスの価格を上乗せする。これが、サプライチェーン全体を通じてあらゆる財・サービスにインフレを波及させる要因となる。
  3. ‌需要牽引型(Demand-pull)インフレへの移行‌
    供給側の問題から、人々の心理や行動変容を伴う「需要サイド」のインフレへと移行する現象であり、これがインフレの最も強力で制御困難な段階である。

自己修正的な供給インフレと、制御不能な需要インフレの臨界点(ティッピングポイント)

Jim Rickards?は、これら複数のインフレ要因がどのように推移し、どの段階で真の危機的状況に陥るかの「構造的な時間差」を強調している。

  • ‌供給サイド・インフレの自己修正性‌
    燃料費やガソリン代の高騰による初期のインフレは、実は‌‌「自己修正(self-correcting)」する傾向がある‌‌。ガソリンなどのエネルギー需要は非弾力的(inelastic)であるため、人々は給油費用を支払うために、外食、旅行、衣服の購入といった他の支出を切り詰めざるを得なくなる。この買い控え(支出削減)は結果的に企業のレイオフや失業率の上昇を招き、最終的に景気後退(リセッション)を引き起こしてインフレを沈静化させる。
  • ‌需要サイド・インフレへの臨界点(Tipping Point)‌
    しかし、ある臨界点を超えると、インフレは人々の行動心理に根ざした「需要牽引型インフレ」へと変貌する。人々が「インフレは収まらず、さらに悪化する」と予想し始めると、「価格がさらに上がる前に、冷蔵庫や新しい家具を今すぐ買っておこう」と、本来先にするはずだった需要を前倒し(pull forward)するようになる。
  • ‌金融政策による制御の限界‌
    供給サイドから発生するインフレを抑え込むのは比較的容易だが、‌‌人間の心理や行動特性(behavioral/psychological)に深く結びついた需要サイドのインフレを止めることは極めて困難である‌‌。これは中央銀行が金融政策のノブをひねるだけで簡単に調整できるものではないため、最終的に金利の急激な高騰を招くことになる。

世界経済予測全体におけるインフレ構造の影響と連動性

1970年代のスタグフレーションの再現

Jim Rickards?は、自身が直接目撃した1970年代のインフレプロセスが、現代において再来しつつあると警告している。
当時も、1973年の供給サイドのショックから始まり、1974年には深刻な景気後退と株式市場の暴落を経験した。その後、1976年から1978年にかけて需要主導型のインフレへと移行し、最終的に1980年から1981年には米国のインフレ率が15%に達したことで、Paul Volcker?(ポール・ボルカー?)連邦準備制度理事会議長が金利を20%まで引き上げる異次元の措置を講じることとなった。リカードは、中東の戦争が長期化し、多くの商品やサービスに価格高騰が波及することで、現代も同様のプロセスをたどる瀬戸際(very close)に立っているとみている。

財政政策の影響と関税政策の誤解

マクロ経済予測において、Jim Rickards?はインフレを真に駆動する要因として‌‌「財政政策(fiscal policy)」と「人々の行動期待(behavioral expectations)」の2点‌‌を挙げている。
一方で、Donald Trump(ドナルド・トランプ)政権が掲げる高関税政策(Tariffs)については、世間の懸念とは異なり‌‌「インフレ要因にはならない」‌‌と予測する。関税が課されると、多くの代替調達(substitution)が発生するだけでなく、米国内に直接投資が行われてデータセンターや半導体、自動車などの国内生産(関税を回避する手段)が活発化するためである。

ゴールド(金)価格10,000ドル急騰のトリガー

このインフレの構造的変化は、ゴールド価格を劇的に押し上げる最大のカタリスト(触媒)として機能する。
これまでのゴールドの上昇は、インフレ対策ではなく、米ドルの武器化に対する「安全避難先需要」というファンダメンタルズによって牽引されてきた。そのため、ゴールドはまだ「インフレの波(inflation bandwagon)」には乗っていない。
しかし、中東の地政学的危機による物理的な資源枯渇(備蓄の底つき)をきっかけに、需要牽引型インフレの臨界点が突破されれば、金利の急騰とともにゴールドのインフレ対抗型需要が爆発し、10,000ドルに向けた急ピッチな高騰が開始されると予測されている。

AI (人工知能) の懸念

Jim Rickards?(ジム・リカード?)が指摘するAIバブルの構造的欠陥と懸念

収益モデルの不在と期待外れの「生産性向上」

Jim Rickards?(ジム・リカード?)は、Alex Adrenov?(アレックス・アドレノフ?)との対談の中で、AI(人工知能)業界が極めて深刻なバブルの状態にあり、その崩壊が間近に迫っていると警告している。
OpenAI(オープンAI)やAnthropic(アンスロピック)といったAIフロントモデル開発企業やハイパースケーラーは、大規模言語モデル(LLM)の処理能力をトークン(処理パワーの切り売り)の形で提供している。しかし、実際のビジネス現場において、‌‌AIがもたらす生産性の向上効果は、その利用にかかる莫大なコスト(価格)を正当化できるほど高くはない‌‌ことが明らかになりつつある。ユーザー側がコストパフォーマンスの悪さからトークンの高額な購入を拒めば、AIベンダー側はインフラ投資のために積み上げた巨額の負債を返済できなくなるというデッドロックに直面している。

業界内でお互いを支え合う「循環融資(Circular Financing)」

この歪んだ収益構造を覆い隠すため、AI業界内では極めて不健全な資金還流(ポンジ・スキーム的な仕組み)が行われている。
半導体チップの覇者であるNvidia(エヌビディア)などのハードウェアメーカーが、OpenAIやAnthropic、Google(グーグル)といったAIモデル開発企業に投資し、それらの企業がOracle(オラクル)やAmazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス)などのクラウド・インフラプロバイダーやNvidiaに資金を還流させる、という‌‌「循環融資(circular financing)」によって、見かけ上の市場規模や需要が維持されている‌‌にすぎない。このエコシステムの外側にいる「一般の外部投資家」からの真の投資関心は、実はそれほど高まっていないのが現状である。

インターネットを汚染する「スロップ(Slop / ゴミデータ)」と技術的自壊

AIが抱えるもう一つの致命的な懸念は、データエンジニアリング上の欠陥である。
現在のLLMはインターネット上の膨大なページを学習ソースとしているが、AIの急速な普及に伴い、不正確で低品質なAI生成データ、すなわち‌‌「スロップ(Slop / ゴミデータ)」がインターネット上に大量に排出・氾濫‌‌し始めている。AIモデルが自分自身の排出したゴミデータを次の学習に再利用するという「池を自ら汚染する(polluting the pond)」悪循環が発生しており、リカードはこれを一時的な不具合ではなく‌‌「エンジニアリング上の大災害(engineering disaster)」‌‌であると切り捨てている。これにより、AIモデルの出力品質は今後さらに劣化(自壊)していくことになる。


リカードの世界経済予測全体におけるAIバブル崩壊の影響

巨額債務のデフォルトが引き起こすマクロ経済への衝撃

リカードのマクロ経済予測において、このAIバブルの崩壊は、すでに脆弱化している世界経済に決定的な金融ショックを与えるトリガーとなる。
AI関連市場には、直近5ヶ月だけで‌‌約2,360億ドルに上るAI関連の債務(Debt)‌‌が積み上がっている。Alphabet(アルファベット)、Meta(メタ)、Microsoft(マイクロソフト)といった巨大IT企業の決算発表では、アナリストが意図的に低く設定した「市場予想」を上回ることで好調をアピールするゲームが行われているが、これは実態を反映していない。これらのメガテック企業は広告やSNSといった別の「超優良事業」を抱えているため、AI事業の致命的な損失や収益化の失敗が一時的にバランスシート上で見えにくくなっているにすぎないからである。
しかし、企業の実質的な「現金(Cash)」や「キャッシュフロー」を分析すれば、手元資金が減少し、債務だけが急増しているという‌‌破滅(列車事故 / train wreck)に向けた確実な足音が聞こえる‌‌。OpenAIやAnthropicといった純粋なAI企業(Pure AI plays)やPalunteer?(パランティア?)などが市場の過剰な期待(ハイプ)に応えられなくなった瞬間、積み上がった巨額の債務がデフォルト(債務不履行)を起こし、バブルが一気に破裂して世界的な「テクニカル・リセッション(不況)」をさらに深化させることになる。

シルバー(銀)市場への長期的影響とレジリエンス

AIサーバーやハイパースケーラーといった物理的なITインフラの建設には、優れた導電性を持つ貴金属である‌‌Silver(シルバー)‌‌が大量に必要とされるため、AI市場はシルバーの産業需要を支える要素の一つとみなされている。
AIバブルの崩壊に伴って一時的にIT設備投資(capex)が縮小し、ITセクターからのシルバー需要が鈍化する懸念はあるものの、リカードの世界予測においてシルバー市場が崩壊することはない。なぜなら、地政学的リスク(中東戦争やロシア・ウクライナ戦争)の泥沼化に伴い、米国やドイツなどのヨーロッパ諸国で‌‌「軍事防衛支出(ミサイル、ドローン、各種迎撃システムの生産)」が激増‌‌しており、この軍事ハードウェア生産による強力な産業需要ベクトルがシルバーの価値を支え続けるからである。さらに、ゴールドが安全資産として10,000ドルに向けて急騰する際、シルバーもその強力な上昇トレンドに牽引される(along for the ride)ため、長期的には強気の見通しが維持される。

金融政策とFRB

Kevin Warsh?(ケビン・ウォルシュ?)新議長によるFRBの劇的な変化

フォワードガイダンスの廃止と「声明」の極小化

Jim Rickards?(ジム・リカード?)によれば、Federal Reserve(連邦準備制度、以下Fed?)の新議長に就任するKevin Warsh?(ケビン・ウォルシュ?)は、従来の「フォワードガイダンス(金融政策の先行き指針)」を全く重要視していない。なぜなら、彼は「Fed?の予測は常に間違っている」という事実を深く理解しているからである。
この方針転換は、すでに具体的な形で現れ始めている。FOMC?(連邦公開市場委員会?)が金利決定後に発表する声明について、Warsh?はすでにその長さを大幅に短縮した。かつて1,000ワード近くあった声明文は、現在300ワード程度にまで削減されており、将来的にはわずか数文にまで縮小される可能性がある。

「ドットチャート(ドットプロット)」の廃止と情報の「ブラックボックス化」

さらにWarsh?は、市場が注目する「ドットチャート(ドットプロット)」を完全に廃止する方針である。
ドットチャートは、FOMC?に参加する19名(7名の理事と12名の地区連銀総裁)が失業率、インフレ率、GDP成長率、金利見通しを匿名でプロットしたものであるが、Rickards?に言わせれば、これらは「常に間違っている」ため、予測として利用する価値が全くないものである。Warsh?も同様に、根拠のない将来予測を語り続けることを嫌悪しているため、ドットチャートを廃止しようとしている。
Rickards?が1980年代後半から1990年代前半にかけて、大手プライマリーディーラー(公認政府証券ディーラー)の執行委員としてFed?と日常的に直接取引を行っていた時代、Fed?は一切の記者会見も声明も発表せず、金利変更などの政策動向は取引を通じてしか察知できなかった。その後、Ben Bernanke?(ベン・バーナンキ?)の時代から記者会見や声明、ドットチャートを用いた「積極的な対話(透明性)」が重視されるようになったが、Warsh?体制下の新たなFed?は、当時の「ラジオサイレンス(沈黙の時代)」に近い、情報の露出を大幅に抑えた「ブラックボックス」的な運営へと移行していくと予測されている。


足元の金利政策予測とFRB内部の分裂

利上げ派と利下げ派の対立、および「現状維持」という妥協

Rickards?は、直近のFOMC?における政策金利の決定について、最終的に「金利を据え置く(何もしない)」という決着になると予測している。現在、FRB内部では以下の通り政策スタンスが真っ二つに分裂している:

  • ‌利上げ派(強硬派・4〜5名)‌‌: 差し迫るエネルギー価格や原材料不足に伴う「インフレ」の危機に対抗するために、金利を引き上げるべきだと主張する。
  • ‌利下げ派(ハト派・2〜3名)‌‌: 失業率の上昇や、景気が本格的なリセッション(不況)へ突入する懸念から、金利を引き下げベきだと主張する。

インフレと失業率の間には単純な逆相関関係はなく、双方が同時に上昇する(スタグフレーション)現象が実際に起こり得る。この状況下では双方を同時に退治することは不可能なため、どちらか一方を選択する必要があるが、内部の対立によって現状は「何もしない」という膠着状態(妥協)に落ち着くことになる。しかし、Rickards?は物理的な供給網の寸断から、今後インフレは確実に高進していくと予測している。

Jerome Powell?(ジェローム・パウエル?、Jay Powell?)元議長による「意地の居座り」

このFRB内部の混迷をさらに深めているのが、前議長であるJerome Powell?(ジェローム・パウエル?、Jay Powell?)の異例の動向である。
Powell?は議長の座から退いたものの、14年の任期を持つ「理事(governor)」としての地位を辞任せず、2028年の任期満了までボードに留まることを宣言している。議長退任後に理事が居座り続けるのは、1949年のMarriner Eccles?(マリナー・エクルズ?)以来、実に約80年ぶりの異常事態である。
Rickards?によれば、Powell?が居座る唯一の目的は、Donald Trump(ドナルド・トランプ)大統領の「目をつつく(意地悪をする)」ことである。通常通りPowell?が辞任すれば、Trump大統領が新たな理事を任命してFRBへの影響力を強めることができるが、Powell?はそれを阻止するために意図的に理事に留まっている。
その結果、新議長となったWarsh?は、取締役会(boardroom)のすぐ隣に「前議長であり、依然として強力なコネクションを持つPowell?が座り、自分の肩越しに監視している」という、極めてやりにくい、困難な政治的立場(tough spot)に置かれており、機動的な金融政策決定を阻害する構造的要因となっている。

主要人物と組織

主要人物一覧

名前の英語表記カタカナ表記簡単な説明
‌Jim Rickards?‌
(Jim Records?)
‌ジム・リカード?‌
(ジム・レコード?)
本対談のゲスト。マクロ経済学者、著述家、および投資ニュースレターの執筆者。ゴールド価格が10,000ドルに急騰することや、世界的な経済シャットダウン(不況)を予測している。
‌Alex Adrenov‌‌アレックス・アドレノフ‌本対談の番組「Microscopic Podcast(マイクロスコピック・ポッドキャスト?)」のホストであり、ジム・リカードをゲストとして迎えている。
‌Peter Schiff‌‌ピーター・シフ‌ジム・リカードの長年の知人。Amsterdam(アムステルダム)でのアニバーサリーイベントにて、リカードとともに3時間に及ぶ対談を行った経済学者・投資家。
‌Jim Rogers‌‌ジム・ロジャーズ‌「史上最高のコモディティトレーダー」と称される人物。かつてリカードに対し、「50%のドローダウンを経験せずに月(最高値)に到達するコモディティはない」という市場原則を語った。
‌Benoit Mandelbrot?‌
(Mandelbrot? / Mandel Brock?)
‌ベノワ・マンデルブロ?‌
(マンデル・ブロック?)
フラクタル幾何学の創始者(数学者)。彼が提唱した「スケール不変性(scale invariance)」のモデルは、現在のゴールド市場の一時的な下落ボラティリティを数学的に説明する根拠として用いられている。
‌Donald Trump‌
(President Trump)
‌ドナルド・トランプ‌米国大統領。対イランの強硬な外交姿勢、Houthi?(フーシ派?)に対する空爆の指示、カナダなどへの50%関税の適用など、地政学および貿易政策を主導している。
‌Paul Volcker?‌
(Vulker?)
‌ポール・ボルカー?‌
(ボルカー?)
元FRB(連邦準備制度)議長。1970年代の需要牽引型インフレを退治するため、1980年代初頭に金利を20%まで引き上げる異次元の措置を講じた。
‌Kevin Warsh?‌
(Kevin Worsh?)
‌ケビン・ウォルシュ?‌
(ケビン・ウォーシュ?)
新たに就任したFRB議長。フォワードガイダンスやドットチャートなど「常に間違っている予測情報」を嫌い、声明を大幅に短縮するなど、FRBを「沈黙(ブラックボックス)」の方向へ改革している。
‌Ben Bernanke?‌
(Bernaki?)
‌ベン・バーナンキ?‌
(バーナンキ?)
元FRB議長。記者会見や声明、ドットチャートなどを導入し、市場との対話や透明性を積極的に推進する体制(現在のWarsh改革の対極)を作った。
‌Jerome Powell?‌
(Jay Powell? / Jay Pal?)
‌ジェローム・パウエル?‌
(ジェイ・パウエル? / ジェイ・パル?)
前FRB議長。議長退任後も2028年までの14年間の理事(Governor)任期を辞任せず留まり、トランプ政権に影響力を与える vacancy(空席)を作らせないために居座っている。
‌Marriner Eccles?‌
(Mariner Eckles?)
‌マリナー・エクルズ?‌
(マリナー・エクルズ?)
1949年にFRB議長を辞任した後も、理事の座に留まり続けた過去唯一の先例人物。現在のパウエルの動きの歴史的比較対象として挙げられている。
‌Alistair Macleod?‌
(Alistister Mcllo? / Alistister Mloud?)
‌アリスター・マクラウド?‌
(アリスター・マクラウド?)
金市場のアナリスト。中国が30,000トンの金を蓄積しており、ゴールド裏付けの通貨体制(人民元)を準備していると推計しているが、リカードからは民間保有分との混同を指摘されている。
‌Joe Kernen?‌
(Joe Karen?)
‌ジョー・カーネン?‌
(ジョー・カレン?)
CNBCのビジネスニュースキャスター。「メガテック企業が市場の事前予測を上回る決算を発表した」という茶番的なゲームを市場に伝える役割として言及されている。

主要組織・勢力一覧

組織の英語表記カタカナ表記簡単な説明
‌GoldRepublic Global?‌‌ゴールドリパブリック・グローバル?‌本対談が公開されたYouTubeチャンネル。Amsterdam(アムステルダム)に拠点を置き、実物ゴールドなどの取引や情報提供を行っている [2, メタデータ]。
‌Federal Reserve?‌
(Fed?)
‌連邦準備制度?‌
(フェド?)
米国の中央銀行制度。Kevin Warsh?新議長のもとで大幅な情報開示の縮小が行われており、インフレ高進と景気後退の懸念の中で金利据え置きの膠着状態にある。
‌Federal Open Market Committee?‌
(FOMC?)
‌連邦公開市場委員会?‌FRBの金利決定を行う12名の会合(実際には19名が部屋に同席する)。インフレ対策の利上げ派(4〜5名)と景気後退対策の利下げ派(2〜3名)に内部分裂している。
‌US Treasury?‌‌米国財務省?‌米国の国家財務機関。ドルの支配力を利用して、他国の資産(米国債など)を凍結するなどの「米ドルの武器化」の実行主体として言及されている。
‌Supreme Court‌‌最高裁判所‌米国最高裁判所。EPA(またはEAPA?)による関税に関する権限を否定する判決を下したが、トランプ政権は別の法律を用いて50%関税を課し続けているため、その影響は限定的とされた。
‌OpenAI‌‌オープンAI‌大手AI開発企業。生産性向上がコストに見合わず収益化に苦しんでおり、循環融資で命脈を保っているものの、膨大な債務によりバブル崩壊とデフォルトの危機に瀕しているとされる。
‌Anthropic‌‌アンスロピック‌大手AI開発企業。OpenAIと同様、明確な収益モデルを持たず、トークンの切り売りと循環融資により市場価値を支えられている純粋なAI(Pure AI)プレイヤー。
‌Nvidia‌‌エヌビディア‌AI向け半導体(GPU)などの開発・販売を行うチップメーカー。AI開発企業(OpenAI、Anthropicなど)に投資し、それらの企業がNvidia製品やインフラを購入するという「循環融資(Circular Financing)」の輪の重要アクター。
‌Google‌‌グーグル‌大手IT企業、AIモデル開発。AIへの巨額投資を行い、NvidiaやOpenAI等と循環融資のネットワークを形成している。
‌Oracle‌‌オラクル‌クラウドおよびデータベース大手のインフラプロバイダー。AIエコシステムにおける相互投資(循環融資)の対象として言及されている。
‌Amazon Web Services‌‌アマゾン・ウェブ・サービス‌大手クラウドインフラプロバイダー。AIエコシステム内で循環的な資金還流を受けているクラウドプラットフォームの一つ。
‌CNBC‌‌シーエヌビーシー‌米国のビジネスニュース放送局。FRBのドットチャートの話題や、メガテック企業が市場予想を上回ったとする「演出された決算ニュース」の報道姿勢について言及されている。
‌Alphabet‌‌アルファベット‌Googleの親会社。広告代理店事業などの極めて健全なコアビジネスを有するため、AI事業における莫大な損失や収益性の悪さが財務諸表(損益計算書)上で覆い隠されていると指摘されている。
‌Meta‌‌メタ‌大手SNS・IT企業。SNSや広告といった極めて収益性の高い既存事業があるため、AI分野での収益性の低さが一般に表面化しにくくなっているとされる。
‌Microsoft‌‌マイクロソフト‌大手IT企業。他メガテック企業と同様、コア事業の強さによってAI投資の弱みを隠しているが、バランスシート上ではキャッシュの減少と債務の増大が進み、バブル崩壊の危機にあるとされる。
‌Palantir?‌
(Palunteer?)
‌パランティア?‌AIデータ分析専業企業。純粋なAI企業の一つとして、市場の異常な期待(ハイプ)に応えられずにバブル破裂のショックを受ける懸念が指摘されている。
‌Houthi?‌
(hoodies?)
‌フーシ派?‌
(フーディーズ?)
イエメンの武装組織。Red Sea(紅海)の航路を巡る船舶攻撃によって、事実上のSuez Canal(スエズ運河)閉鎖と同等の打撃を世界経済に与えている。トランプ氏は空爆で屈服させると主張しているが、リカードは「すでに石器時代のような生活様式を送る彼らに空爆は通用しない」と一蹴している。
‌People's Bank of China?‌
(People's back of China?)
‌中国人民銀行?‌中国の中央銀行。2009年の600トンから、現在は約3,000トンの公式金準備を保有しているが、実質は政府系ファンド分と合わせてその倍以上の金を保有しているとみられている。
‌State Administration for Foreign Exchange?‌
(SAFE?)
‌国家外国為替管理局?‌中国の政府系主権ファンド(オフバランスシートの非公開機関)。中国人民銀行の公表分とは別に、非公開で3,000〜4,000トン以上の実物ゴールドを蓄積していると推測されている。
‌Reserve Bank of India?‌‌インド準備銀行?‌インドの中央銀行。公式には500トン強のゴールドを保有している。これに対しインドの一般市民(民間)は、合計で約15,000トンもの実物ゴールドを個人資産として保有しているとされる。
‌Paradigm Press?‌‌パラダイム・プレス?‌米国の金融出版社。ジム・リカードがマクロ経済予測を執筆・配信しているニュースレター「Strategic Intelligence(ストラテジック・インテリジェンス)」の発行元。

情報源

動画(52:05)

https://www.youtube.com/watch?v=gLn6LF1_PHo

123,100 views 2026/07/29 Macroscopic Podcast

Jim Rickards warns that a global economic shutdown may be approaching as the Strait of Hormuz and Red Sea disruptions collide with depleted strategic reserves, rising energy prices and fragile supply chains.

In this interview, Rickards explains why he expects a severe US recession, higher inflation and a major escalation in the Iran war. He also shares his outlook for gold, including a possible drop toward $3,600 before an accelerated move to $10,000, and explains why silver could follow gold higher.

We also discuss the growing AI debt bubble, circular financing between major technology companies, the risk of defaults, changes coming to the Federal Reserve, Trump’s tariffs and why Rickards dismisses the idea of a gold-backed Chinese yuan.

Recorded 22nd of July 2026

(2026-08-07)