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橋本健二 : 新しい階級社会とアンダークラスの衝撃

· 87 min read
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title (情報源)

前置き+コメント

橋本健二(早稲田大学人間科学学術院教授(社会学))による自著、

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『アンダークラス——新たな下層階級の出現』、筑摩書房、2018-12

の解説を AI で整理した。


以下の表がアンダークラスの数値での位置づけ。

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ref: https://voice.php.co.jp/detail/13689/image/1


人類社会は程度の差はあれど、本質的には常にどこかしら壊れており、壊れながらも、危機を内包しながらも、どうにかこうにか 成立している。壊れていない社会、危機を内包しない社会など存在したためしがない。いよいよ持ち堪えられなくなった社会は崩壊する。会社組織も同じ。

そしてこれは、個々の人間も同じで、肉体的にも精神的にも壊れながらも、危機を内包しながらも、どうにかこうにか(or かろうじて) 成立している。

不運な国家、社会、個人は早々にヘタる。そういった様相は内側からは社会矛盾や社会悪、不正義、重病として見えるが、外側から観れば 社会/組織 構造の圧力が生み出す必然的な地表面の歪みとして映る。圧力が大きくなれば断層帯が跳ねて大地震が生じるなり、大陥没が生じる(倒産、革命、国家崩壊、自殺、病死)。


以下、情報源を NotebookLM で整理した内容。

要旨

この出典は、早稲田大学の橋本健二教授が提唱する‌‌「新しい階級社会」‌‌の構造と、現代日本における格差の実態を解説したものです。

かつての日本は‌‌資本家、新中間、旧中間、労働者‌‌という4つの階級で構成されていましたが、現在は労働者階級が分裂し、非正規雇用に固定された‌‌「アンダークラス」‌‌が台頭していると指摘しています。

この層は‌‌年収約216万円‌‌という極めて低い所得水準にあり、家族形成という労働者としての基本的条件すら維持できない状況に置かれています。バブル崩壊後の‌‌グローバル化やサービス経済化‌‌がこの構造変化を加速させ、社会全体での消費停滞や格差拡大を招く要因となりました。

教授は、昭和の格差とは異なるこの深刻な階級的分断が、‌‌社会的な連帯の喪失‌‌や政治的な閉塞感を引き起こしていると警鐘を鳴らしています。

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目次

  1. 前置き+コメント
  2. 要旨
  3. 日本の新しい階級社会と「アンダークラス」に関するブリーフィング・ドキュメント
    1. エグゼクティブ・サマリー
    2. 1. 階級社会の基本的定義と構造
    3. 2. 新たな階級「アンダークラス」の出現
    4. 3. 格差拡大とアンダークラス形成の背景
    5. 4. 格差拡大がもたらす社会的弊害
    6. 5. 歴史的視点:昭和と令和の比較
    7. 6. 結論と今後の展望
  4. 日本の階級社会における主要5階級の指標比較
  5. 階級の定義
    1. ‌「日本の新しい階級社会」という文脈における階級の変化‌
  6. 従来の4階級構造
  7. 新しい階級:アンダークラス
  8. 格差拡大の背景要因
    1. ‌1. マクロ・グローバルな経済構造の変化‌
    2. ‌2. 雇用の規制緩和と古い「非正規」観の放置(人為的・制度的要因)‌
    3. ‌3. アメリカから波及した新しい経営理念の浸透‌
    4. ‌格差拡大が社会全体にもたらす悪循環‌
  9. 昭和と令和の比較
    1. ‌1. 貧困層の構造的な位置の違い(昭和前期との比較)‌
    2. ‌2. 「一億総中流」からの転落(昭和後期との比較)‌
    3. ‌3. 格差の拡大と社会的連帯の喪失‌
  10. 格差拡大による社会的弊害
    1. ‌1. 経済の長期低迷(格差拡大不況)‌
    2. ‌2. 社会的連帯感の喪失と凶悪犯罪の誘発‌
    3. ‌3. 政治の歪みと富裕層支配の固定化‌
    4. ‌4. 次世代の再生産(社会の存続)の危機‌
  11. 現代日本における「新しい階級社会」とアンダークラスの構造分析報告書
    1. 1. 序論:日本型「一億総中流」社会の終焉と新たな階層構造の出現
    2. 2. 伝統的「4階級構造」の構成要素と新中間階級の変質
    3. 3. 「アンダークラス」の出現:労働者階級の致命的な分裂
    4. 4. アンダークラス形成を加速させたマクロ要因の多角的分野
    5. 5. 結論:格差社会の本質的弊害と連帯の再構築
  12. 社会学入門:階級の定義と「アンダークラス」が変えた日本の姿
    1. 1. 「階級」とは何か:経済的地位が形作る現代の身分
    2. 2. 伝統的な「4つの階級」とその特徴
    3. 3. 新たな衝撃:「アンダークラス」の出現と特徴
    4. 4. 階級社会が変貌した理由:グローバル化と政策の影
    5. 5. 格差拡大がもたらす社会の停滞と未来への展望
  13. 情報源

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日本の新しい階級社会と「アンダークラス」に関するブリーフィング・ドキュメント

エグゼクティブ・サマリー

現代日本は、従来の階級構造が変容し、新たに「アンダークラス」が定着した「新しい階級社会」へと移行している。かつての日本社会は階級間の格差が比較的小さく、多くの国民が「中流」意識を持つことができたが、バブル崩壊以降の雇用形態の変化やグローバル化により、労働者階級が上下に分裂。その下層に位置するアンダークラスは、低賃金の非正規労働を一生涯続けることを余儀なくされ、家族形成という基本的な社会基盤すら維持できない状況に置かれている。この格差の拡大は、個人の貧困問題に留まらず、国内消費の低迷や社会連帯の喪失、さらには次世代の労働力を確保できないという社会存立の危機を招いている。


1. 階級社会の基本的定義と構造

現代社会における「階級」とは、主に経済的地位の違いによって区別される人々の集まりを指す。これは前近代の身分制やカーストとは異なり、経済的要因、特に「生産手段(土地、建物、機械、資本など)」の所有の有無が基準となる。

従来の4つの階級

20世紀半ば以降の資本主義社会には、共通して以下の4つの階級が存在してきた。

  • 資本家階級: 生産手段を所有し、労働者を雇って経営判断を行う層。
  • 新中間階級: 管理職や技術者、専門職。雇われ労働者ではあるが、高い裁量権を持ち、主に「言葉」や「知識」を用いて仕事をする層。
  • 労働者階級: 生産現場などで直接労働に従事する層。
  • 旧中間階級: 自営業者や農民。生産手段を所有しているが、規模が小さいため自らも現場で働く層。資本家と労働者の両方の要素を兼ね備える。

2. 新たな階級「アンダークラス」の出現

現代の日本社会における最大の変容は、労働者階級が上下に分裂し、その最下層に「アンダークラス」が形成されたことである。

アンダークラスの定義と特徴

アンダークラスとは、非正規労働者として働き続け、人生の大部分をその状態で過ごす人々を指す。かつての非正規雇用は、学生、主婦、定年退職者など「人生の一時期」における補助的な役割が主であったが、現代では「学校卒業後、そのまま非正規として固定される」層が数百万人の規模で出現している。

【アンダークラスの主要データ】

指標数値・詳細
推定人口約890万人(旧中間階級の658万人を上回る)
平均個人年収216万円(正規労働者486万円の約4割強)
貧困率37.2%
未婚率69.2%(59歳以下。正規労働者に比べ極めて高い)

社会的再生産の危機

労働者階級は本来、次世代の労働者を育成する役割を担うが、アンダークラスは結婚して子供を育てることが困難な収入レベルにある。これは生物学的・社会的な基本条件を欠いた状態であり、社会の持続可能性を脅かす「画期的な(特筆すべき)事態」とされる。


3. 格差拡大とアンダークラス形成の背景

アンダークラスが出現し、格差が拡大した背景には、マクロ経済要因と人為的な構造変化の双方が存在する。

マクロ的要因

  1. サービス経済化: 飲食業や小売業などのサービス業は需要変動が激しく、需要に合わせて柔軟に調整できる非正規労働者に依存しやすい構造を持つ。
  2. グローバル化: 製造業を中心に国際的なコスト競争が激化し、企業が人件費削減を徹底した結果、正規採用を抑制した。

社会・制度的要因

  • 規制緩和: かつては法的に制限されていた派遣労働の対象範囲が拡大され、非正規雇用の利用が常態化した。
  • 株主重視の経営: 利益を株主配当に優先的に割り当てる傾向が強まり、労働者の賃金が抑制された。
  • 成果主義の導入: 技術者や管理職などの「成果」が見えやすい層に報酬が集中する一方、現場労働者の報酬は据え置かれる、あるいは低下する傾向が生じた。

4. 格差拡大がもたらす社会的弊害

格差の拡大は、社会全体に深刻な負の影響を及ぼしている。

経済の低迷(格差拡大不況)

富裕層(資本家や新中間階級の上層)は、消費しきれないほどの収入を得ても貯蓄に回すため、社会全体の消費力は向上しない。一方で、低所得層は収入減に直結して消費を切り詰める。このメカニズムにより、過去20年以上にわたり日本の所得水準は停滞し続けている。

社会の不安定化

  • 犯罪の増加と連帯の喪失: 格差が極端になると、他者が「自分と同じ人間」に見えなくなる。連帯感が失われることで、社会不安が増大し、犯罪の誘因となる。
  • 物神崇拝と権力: お金を神のように崇拝し、蓄財そのものを目的化する傾向。蓄積された富は政治的影響力に転換され、さらに富裕層に有利な政策がとられるという悪循環が生じている。

5. 歴史的視点:昭和と令和の比較

「昭和の格差」と「令和の格差」には決定的な構造の違いがある。

  • 高度経済成長期の「1億総中流」: 当時も階級は存在したが、社長と一般社員の給与差は数倍から10倍程度と小さかった。また、現場労働者の多くが正社員であり、非正規は人生の一時的な形態に過ぎなかった。
  • 昭和前期の貧困層との違い: かつての貧困層(小作農や人力車夫など)は、形式上は「自営業者」であった。高度経済成長によってこれらの層は正規労働者として吸収され、一度は消滅した。
  • 現代のアンダークラス: かつての例外的な貧困とは異なり、労働市場の構造からシステマティックに生み出された、巨大な「階級」としての貧困層である。

6. 結論と今後の展望

格差の拡大は、アンダークラスの生活を破壊するだけでなく、経済停滞や社会不安を引き起こし、国家の存立基盤を危うくしている。この状況を打破するためには、格差縮小に向けた政治的な合意形成が不可欠である。

リベラル勢力や野党支持層だけでなく、社会の安定を重視する伝統的な保守層も、格差拡大による社会の崩壊を危惧しており、両者が一致して格差縮小政策を求めることで、政治の流れを変える可能性がある。格差は自然現象ではなく、制度や慣行によって生じているものであり、社会的な合意形成を通じて是正することが可能である。

日本の階級社会における主要5階級の指標比較

階級名主な職業・労働形態平均個人年収未婚率 (59歳以下)貧困率推定人口生産手段の所有・裁量の有無
資本家階級大企業の経営者、オーナー経営者などNot in sourceNot in sourceNot in sourceNot in source所有している(建物、土地、機械、大量の株式など)
新中間階級管理職、技術者、専門職(事務職の一部を含む)Not in sourceNot in sourceNot in sourceNot in source所有していないが、仕事の進め方に大きな裁量権を持つ
労働者階級(正規)正規雇用の現場労働者、事務職など486万円Not in sourceNot in sourceNot in source所有しておらず、裁量権も少ない(指揮命令を受けて働く)
旧中間階級自営業者(商店主、農民など)Not in sourceNot in sourceNot in source658万人小規模な生産手段を所有し、自ら現場で働く
アンダークラス非正規労働者(パート・アルバイト等、主婦・学生・高齢者を除く)216万円69.2%37.2%890万人所有しておらず、極めて低賃金で裁量も乏しい

[1] 【日本の新しい階級社会】アンダークラスとは何か?/個人年収は216万円/階級はどのように分けられる?/昭和の格差と令和の格差/橋本健二

階級の定義

階級とは、‌‌経済的地位の違いで区別される人々の集まり‌‌を指します。身分や宗教などの伝統的・封建的な要素で人々が分けられていた前近代社会とは異なり、近代社会においては経済的な要因が階級を分ける主な基準となります。

その中でも最も基本的かつ重要な基準となるのが、建物、土地、機械など、生産活動を行うために必要な‌‌「生産手段」を持っているか持っていないか‌‌という点です。提供された資料によると、この生産手段の有無と働き方の違いによって、20世紀半ば以降の資本主義社会には主に以下の‌‌4つの階級‌‌が存在していました。

  • ‌資本家階級‌‌:大きな生産手段を所有し、自らは高度な経営判断に集中する層。
  • ‌労働者階級‌‌:生産手段を持たず、給料をもらって現場で働く層。
  • ‌旧中間階級‌‌:農家や自営業者など、前近代から存在し、小規模な生産手段を所有しながら自分と家族で現場労働も行う層。
  • ‌新中間階級‌‌:企業の巨大化に伴って20世紀から登場した層。雇われてはいるものの、管理職や専門職(技術者、編集者など)として自分の裁量で働き、資本家と労働者の中間に位置する人々。

‌「日本の新しい階級社会」という文脈における階級の変化‌

日本では1970年代の高度経済成長期などを通じて、大企業の社長から現場の労働者まで給与の格差が小さかったため、「一億総中流」と呼ばれ階級の存在が目立たない時代が続いていました。しかし近年、この階級構造に大きな変化が生じ、‌‌「新しい階級社会」‌‌が到来したと指摘されています。

この新しい階級社会を決定づけているのが、‌‌労働者階級が上下に分裂し、その下層に「アンダークラス」と呼ばれる新しい階級が出現した‌‌ことです。

かつての非正規労働者(学生のアルバイト、主婦のパート、定年退職後の嘱託など)は、家族の収入や退職金など生活を支える別の基盤があったため、賃金が低くても問題になりにくい構造がありました。しかし現在では、学校を卒業してすぐに非正規労働者となり、そのまま一生涯の大部分を非正規労働者として過ごす若者たちが増加しています。これがアンダークラスです。

アンダークラスは現在約890万人にのぼり、旧中間階級の数をはるかに上回っています。彼らの‌‌個人年収はわずか216万円であり、貧困率は37.2%‌‌に達しています。その結果、彼らの多くは結婚して子どもを産み育てるだけの経済的余裕がなく、59歳以下の未婚率は約7割(69.2%)にのぼります。‌‌「次世代の労働者を生み育てて社会に送り出す」という、本来の労働者階級が備えているはずの基本条件を欠いている‌‌という点で、これは文明社会において非常に画期的かつ異質な事態とされています。

さらに、日本の新しい階級社会では、アンダークラスの出現と並行して‌‌既存の階級間における格差の拡大‌‌も起きています。 例えば、新中間階級の中でも末端の事務職などはAIや派遣労働への置き換えが進み、労働者階級以下の地位に落ち込む傾向が見られます。一方で、資本家階級(経営者など)は株主重視の経営や成果主義を背景に、自身の報酬や取り分を大幅に増やしています。

結論として、情報源における階級の定義は「生産手段の有無と経済的地位に基づく人々の集まり」ですが、日本の新しい階級社会においては、‌‌従来の4階級の格差が著しく拡大しただけでなく、再生産すら困難な極度の貧困状態にある「アンダークラス」が第5の階級として構造化されてしまったこと‌‌が、最大の衝撃として語られています。

従来の4階級構造

資本主義社会において20世紀半ば頃までに定着した‌‌「資本家階級」「労働者階級」「旧中間階級」「新中間階級」の4階級‌‌は、日本の新しい階級社会への移行に伴い、その内部構造と階級間の関係性を劇的に変化させています。

情報源によれば、日本は歴史的にずっと階級社会であったものの、1970年代頃の高度経済成長期には‌‌階級間の格差があまり大きくなかったため、階級の存在が目立たない「一億総中流」社会に見えていました‌‌。当時の大企業の社長(資本家階級)の給与は現場の労働者と比べてもせいぜい10倍程度の差しかなく、新中間階級(ホワイトカラー)と労働者階級(ブルーカラー)の給与差も小さなものでした。また、労働者階級の圧倒的多数は正社員として安定して働くことができていました。

しかし、グローバル化やサービス経済化、雇用の規制緩和などを背景に、この従来の4階級構造は以下のように大きく変容し、それぞれの階級間で格差が拡大しています。

  • ‌労働者階級の分裂(アンダークラスの誕生):‌‌ 従来の4階級構造に起きた最も致命的な変化は、‌‌労働者階級が上下に分裂し、その下層から「アンダークラス」という新たな層が生まれたこと‌‌です。かつての非正規雇用(学生アルバイトやパート主婦など)は人生の一時期の形態にすぎませんでしたが、現在では学校卒業直後から生涯にわたり非正規として働く人々が増加しました。これにより、従来の労働者階級が担っていた「結婚して次の世代の労働力を生み育てる」ことすら困難な、極度の貧困層が固定化されました。
  • ‌新中間階級の下層化:‌‌ 管理職や専門職などからなる新中間階級の内部でも地殻変動が起きています。事務を担当する新中間階級の下層部分の仕事は、コンピューターや派遣労働、さらにはAIへの置き換えが進んでいます。その結果、‌‌一部の新中間階級は地位が低下し、正規の労働者階級と同等、あるいはそれ以下に落ち込む傾向‌‌がすでに始まっています。
  • ‌資本家階級への富の集中:‌‌ 資本家階級は、アメリカから波及した「株主重視の経営」や「成果主義」を背景に、企業の利益から自らの取り分をかつてないほど大きく増やすようになりました。労働者の賃金が据え置かれる一方で、経営陣は自らの報酬を引き上げ、莫大な富を独占するようになっています。
  • ‌旧中間階級の激減と脆弱化:‌‌ 農家や自営業者などの旧中間階級は、高度経済成長期以降その数を激減させており、現在では約658万人(約10.3%)にとどまっています。これはすでに新興のアンダークラス(約890万人)に数で逆転されている状態です。また、自営業者の多くはアンダークラス(アルバイトなど)の雇用主でもあるため、コロナ禍のような危機においては両者が連鎖して大きな経済的打撃を受けるという脆弱性も浮き彫りになりました。

総じて、日本の新しい階級社会とは、従来の4階級構造が消滅したわけではなく、‌‌4つの階級間の経済的距離が著しく拡大・両極化し、さらに正規のルートからこぼれ落ちた人々が「アンダークラス」として第5の階級を形成してしまった社会‌‌であると結論付けることができます。

新しい階級:アンダークラス

日本の「新しい階級社会」を象徴する最大の変化は、資本主義社会で圧倒的多数を占めるはずの‌‌労働者階級が上下に分裂し、その下層から「アンダークラス」という新たな階級が出現したこと‌‌です。バブル経済崩壊以降、学校を卒業してすぐに非正規労働者となり、そのまま人生の大部分を非正規雇用のまま働き続ける人々が増加したことで形成されました。

このアンダークラスの現実は極めて厳しく、現在その規模は‌‌約890万人に達しており、すでに旧中間階級(約658万人)をはるかに凌ぐ数‌‌となっています。‌‌個人年収はわずか216万円(正規労働者の4割程度)にとどまり、貧困率は37.2%‌‌と極めて高い水準にあります。

新しい階級社会という文脈において、このアンダークラスの存在がとりわけ衝撃的かつ画期的とされるのには、以下のようないくつかの理由があります。

  • ‌「次世代の再生産」という基本条件の喪失:‌‌ 資本主義社会が存続するためには、労働者階級が家族を形成し、次の世代の労働力を生み育てる必要があります。しかし、アンダークラスは収入が低すぎるために結婚や子育てができず、59歳以下の未婚率は69.2%(約7割)に達しています(残りの3割の多くも離死別した女性です)。つまり、‌‌生物種としても文明社会としても基本的な条件である「次世代を育てること」が満たされない人々が階級として固定化されている‌‌のです。
  • ‌「生活の基盤がない」非正規労働者の常態化:‌‌ かつて(1970年代頃)の非正規労働者は、学生アルバイト、パート主婦、定年後の嘱託など「親や夫の収入、あるいは退職金」といった別の生活基盤を持つ人々でした。しかし現代の若年層を中心とするアンダークラスは、そうした支えがないまま低賃金で自活しなければならないため、極度の貧困に直面しています。
  • ‌歴史的に見ても異質な「労働者階級の下」の貧困層:‌‌ 昭和前期(高度経済成長期以前)にも、小作農や人力車夫など実質的に生産手段を持たない貧困層は存在していましたが、彼らはあくまで「旧中間階級(自営業者)の中」に形成された存在でした。これらは高度経済成長期の人手不足でほぼ消滅しました。一方、現代のアンダークラスは‌‌「労働者階級の下」に数百万人規模で新たに形成された集団‌‌であるという点で、過去の貧困層とは根本的に異なります。
  • ‌危機に対する極端な脆弱性:‌‌ アンダークラスの多くは、旧中間階級(飲食店などの自営業者)のもとでアルバイトやパートとして働いています。そのため、コロナ禍のような危機的状況においては、雇用主である旧中間階級の打撃が直接波及し、休業補償なども十分に得られないまま即座に収入を絶たれるという、極めて脆弱な立場に置かれています。

さらに、このような巨大なアンダークラスの存在は、社会全体にも深刻な影響を及ぼします。彼らは収入のほぼ100%を消費に回さざるを得ない層ですが、その収入自体が極端に低いため、社会全体の消費が低迷し「格差拡大不況」を引き起こす要因となっています。また、階級間の格差が絶望的なまでに開くことで社会的な連帯感が失われ、富裕層を標的にした犯罪が増加するなど、社会基盤そのものを揺るがす危険性も指摘されています。

格差拡大の背景要因

日本の新しい階級社会において、階級間の格差が劇的に拡大し、アンダークラスが形成された背景には、‌‌「マクロな経済構造の変化」「政治・制度的な規制緩和」「企業経営の理念の変化」‌‌という大きく分けて3つの要因が複雑に絡み合っています。

‌1. マクロ・グローバルな経済構造の変化‌

  • ‌サービス経済化:‌‌ 産業全体の中で、飲食を含むサービス業や小売業の比重が高まりました。これらの産業は季節や曜日、天候などによって需要の変動が大きく、全員を正社員として抱え続ける体力を持てないため、非正規労働者の増加が必然的な状況を生み出しました。
  • ‌グローバル化:‌‌ 製造業を中心に、発展途上国などとの激しいコスト競争に晒されるようになりました。これに対抗するため、企業は製造拠点を海外へ流出させるとともに、国内に残る部門でも正社員を減らして非正規社員を雇うことでコスト削減を図るようになりました。

‌2. 雇用の規制緩和と古い「非正規」観の放置(人為的・制度的要因)‌

  • ‌古い賃金構造の放置:‌‌ かつての日本において非正規労働者といえば、学生アルバイトやパート主婦、定年後の嘱託などであり、「親や夫の収入があるため給料が安くても構わない」という習慣や社会的前提がありました。しかし、バブル崩壊以降、学校卒業後にそのまま自活しなければならない若者たちが非正規労働者(アンダークラス)になっても、政府や企業はこの低い賃金水準を放置し続けました。
  • ‌非正規雇用の規制緩和:‌‌ 企業側のコスト削減の求めに応じて、政府は労働分野の規制緩和を強力に推し進めました。かつては有期雇用が1年までと制限されていたり、特定分野で派遣労働が禁止されていたりと、非正規で働かせることには法的な制約がありました。しかし、これらの制限が次々と撤廃されたことで、非正規労働者の増加と固定化に拍車がかかりました。

‌3. アメリカから波及した新しい経営理念の浸透‌

  • ‌株主重視の経営:‌‌ 「企業は株主のものである」という考え方が広まり、配当を増やす目的で労働者の賃金が低く抑え込まれるようになりました。
  • ‌成果主義の導入と経営者への富の集中:‌‌ 「報酬は成果に応じて決めるべき」という名目のもと、新しい事業を立ち上げた一部の管理職や技術者が高い報酬を得るようになりました。さらに、アメリカの超富裕層の振る舞いに影響を受けた経営者たちが、企業の利益から自らの報酬(数億円規模にのぼることもあります)を飛躍的に引き上げるようになりました。現場の労働者が生み出した利益であっても、経営者や一部の専門職が「手柄」として独占する仕組みが常態化したのです。

‌格差拡大が社会全体にもたらす悪循環‌

これらの要因が複合的に作用したことで、労働者階級の下層への転落(アンダークラスの誕生)と、資本家階級への富の集中が同時に進行しました。

この構造は、社会に‌‌「格差拡大不況」‌‌という深刻な弊害をもたらしています。何億円もの報酬を得る富裕層は、その莫大な収入を消費しきれずに大部分を貯蓄に回してしまいます。一方で、生活のために収入のほぼ100%を消費に回さざるを得ないはずの貧困層(アンダークラス)は、手元に使えるお金が極端に減っています。結果として、階級間の格差が開けば開くほど社会全体でお金が回らなくなり、日本全体が長期的な消費低迷から抜け出せない状態に陥っていると指摘されています。

昭和と令和の比較

日本の新しい階級社会という文脈において、昭和時代と令和(現代)の社会構造を比較すると、‌‌貧困層が形成される「構造的な位置」と「格差の質」に決定的な違いがある‌‌ことがわかります。

情報源では、昭和を「前期(高度経済成長期以前)」と「後期(高度経済成長期以降)」に分け、現代の階級社会と以下のように比較しています。

‌1. 貧困層の構造的な位置の違い(昭和前期との比較)‌

昭和前期にも、現代のアンダークラスに近い貧しい人々は多く存在していました。しかし、彼らは小作農、人力車夫、行商人のように、土地や車を借りて生計を立てており、「形の上では自営業者であるが、実質的な生産手段は持っていない人々」でした。 つまり、‌‌昭和前期の貧困層が「旧中間階級(自営業者)の中」に形成された存在であったのに対し、令和のアンダークラスは「労働者階級の下」に全く新しく形成された集団‌‌であるという、根本的な構造の違いがあります。

‌2. 「一億総中流」からの転落(昭和後期との比較)‌

昭和の高度経済成長期に入ると、深刻な人手不足により、貧しい人々やその子供たちも正社員として工場などで雇われるようになり、昭和前期型の貧困層はほぼ消滅しました。この時期の貧困層は、母子家庭など例外的な少数派にとどまっていました。 また、昭和後期の非正規労働者は学生のアルバイトやパート主婦など「他に生活基盤がある人々」が中心であり、大企業の社長と現場労働者の賃金格差もせいぜい10倍程度と小さかったため、格差が目立たない社会が実現していました。 しかし、バブル崩壊以降から令和へと至る過程で、‌‌学校卒業後すぐに非正規労働者となり、そのまま数百万人規模で固定化される「労働者階級の分裂」‌‌が起きました。昭和後期には当たり前だった「希望すれば正社員になれる」という前提が崩れ去ったのが現代の社会です。

‌3. 格差の拡大と社会的連帯の喪失‌

昭和の時代には階級間の格差が比較的小さかったのに対し、現在の新しい階級社会では、経営者(資本家階級)が何億円もの報酬を得る一方で、アンダークラスは極度の低賃金(平均年収216万円など)に据え置かれています。 このように格差が絶望的なまでに開くと、社会的な連帯感が失われてしまいます。‌‌「自分はわずかな収入しか得られないのに、あっちには何億円ももらっている人間がいる」という極端な分断社会では、もはや相手が自分と同じ人間に見えなくなり、富裕層から富を奪うような犯罪が生じてもおかしくない心理的土壌‌‌が形成されてしまいます。

結論として、現代の新しい階級社会は、単に昭和前期のような貧しい時代に逆戻りしたわけではありません。‌‌資本主義の根幹をなす労働者階級そのものが崩壊・分裂し、圧倒的な格差によって社会の連帯感すらも破壊されつつある‌‌という点で、昭和のどの時期とも異なる全く新しい異質な社会構造だと言えます。

格差拡大による社会的弊害

日本の新しい階級社会において、一部の富裕層への富の集中と、巨大な「アンダークラス」の固定化によってもたらされる格差拡大は、単なる個人の貧困問題にとどまらず、‌‌社会全体に深刻な構造的弊害(経済的・社会的・政治的ダメージ)‌‌をもたらしています。

情報源では、この格差拡大による社会的弊害として主に以下の4つが指摘されています。

‌1. 経済の長期低迷(格差拡大不況)‌

格差の拡大は、マクロ経済に深刻な消費の低下をもたらします。何億円、あるいは数千万円の報酬を得る資本家階級や富裕層は、莫大な収入を消費しきれず、その3〜4割あるいはそれ以上を貯蓄に回してしまいます。一方で、生活のために本来なら収入のほぼ100%を消費するはずの貧困層(アンダークラス)は、そもそも手元の収入が極端に低いため消費を切り詰めざるを得ません。この結果、‌‌社会全体でお金が回らなくなり、「格差拡大不況」と呼ぶべき慢性的な消費低迷と経済の停滞‌‌が引き起こされています。

‌2. 社会的連帯感の喪失と凶悪犯罪の誘発‌

階級間の経済的距離が絶望的なまでに開くことで、社会をまとめる「連帯感」が破壊されます。自分が年間100万円程度のわずかな収入で苦しむ一方で、何億円も稼ぐ人間が存在するという極端な分断社会の中では、‌‌もはや富裕層が自分と同じ人間には見えなくなってしまいます‌‌。このような心理的な断絶は社会の治安を脅かし、「人を殺してでもお金を奪ってやろう」と考えるような犯罪を生み出す土壌になってしまいます。

‌3. 政治の歪みと富裕層支配の固定化‌

富の集中は、政治的な権力の偏りにも直結します。お金は権力につながるため、蓄財によって政治的影響力を強めた富裕層が政治を支配する仕組みができあがってしまいます。その結果、‌‌政治はますます「豊かな人々」の方に軸足を置くようになり、富裕層をさらに儲けさせるような不平等な社会構造が維持・強化‌‌されてしまいます。

‌4. 次世代の再生産(社会の存続)の危機‌

これまでの対話でも触れた通り、資本主義社会が存続するためには、労働者階級が家族を形成し、次の世代を社会に送り出す必要があります。しかし、アンダークラス(個人年収216万円、59歳以下の未婚率約7割)の増大は、‌‌「次世代の子供を生み育てる」という文明社会や生物種としての基本的な条件そのものを破壊‌‌しています。

情報源では、こうした深刻な社会的弊害を食い止めるためには、政治の流れを変える必要があると示唆しています。具体的には、伝統的に保守を支持してきた層と野党を支持してきた層が一致して「格差縮小」を求めるような動きが起これば、この新しい階級社会の歪みを是正することは不可能ではないと結論づけられています。

現代日本における「新しい階級社会」とアンダークラスの構造分析報告書

1. 序論:日本型「一億総中流」社会の終焉と新たな階層構造の出現

現代日本社会の変容を解明する上で、我々はまず、かつて盤石に見えた「一億総中流」という帰属意識が社会学的・経済学的にどのような構造に支えられていたのかを再考しなければならない。

「階級」とは、単なる格差の呼び名ではなく、本質的には‌‌「経済的地位の違いで区別される人々の集まり」を指す。近代社会における階級分立の基本原理は、建物、土地、機械、あるいは資本といった「生産手段」を所有しているか否か‌‌に求められる。1970年代から80年代にかけての日本において「中流の幻想」が成立し得たのは、階級構造が消失したからではなく、階級間の経済的距離が極めて近かったという戦略的な特殊要因によるものである。

当時の社長と現場労働者の年収格差はせいぜい10倍程度に留まっていた。この程度の格差は、労働者層に「努力すれば手の届く範囲」という錯覚を与え、階級間の対立を不可視化させた。しかし、この擬似的な安定はあくまで高度経済成長という一時的な均衡の上に成り立っていたに過ぎない。産業構造の高度化と資本主義の質的変容は、この「中流」の基盤を解体し、社会を明確な「4階級構造」へと再編し、さらにはその底辺に致命的な分裂を引き起こすこととなった。

2. 伝統的「4階級構造」の構成要素と新中間階級の変質

20世紀以降、企業の巨大化と組織の複雑化は、資本家と労働者の二分法では捉えきれない、新たな階層的分化をもたらした。これが以下の「4階級構造」である。

  1. 資本家階級: 企業の所有と経営を掌握し、高度な経営判断を担う層。
  2. 新中間階級: 管理職、専門職、技術者。雇われの身ではあるが、高度な専門性と強い「裁量権」を持ち、自律的に働くホワイトカラー層。
  3. 旧中間階級: 自営業者や農民。生産手段を所有しているが、自らも現場で労働する、資本家と労働者の両義的性質を持つ層。
  4. 労働者階級: 組織に雇用され、指揮命令系統の下で現場実務を担う層。

ここで注目すべきは「新中間階級」の変質である。20世紀初頭の企業巨大化は、経営判断を補助する層を不可欠とした。中でも「事務職」が新中間階級(将来の幹部候補)なのか、あるいはペンを持っただけの労働者階級なのかという論争は長らく続いてきた。しかし、近年の事務部門におけるAI・コンピューター化、および派遣労働への置換は、この議論に事実上の終止符を打った。

かつて新中間階級の下部に位置した一般事務職等は、裁量を剥奪され、代替可能な「単純労働」へと再定義された。この事務労働の価値低下は、新中間階級の下層を労働者階級以下へと転落させるインパクトをもたらしている。この階層的な地滑りは、次に述べる「アンダークラス」という、労働者階級内部の致命的な分裂を決定づけることとなった。

3. 「アンダークラス」の出現:労働者階級の致命的な分裂

現代日本における最大の構造的転換点は、労働者階級が「正規」と「非正規」に上下分裂し、その最下層に‌‌「アンダークラス」が定着したことにある。アンダークラスとは、一時的な非正規労働者ではなく、「人生の大部分を非正規雇用として過ごし続ける層」‌‌を指す。

この層が抱える過酷な現状は、以下のデータによっても実証されている。

指標アンダークラスの現状(分析値)
平均個人年収216万円
貧困率37.2%
未婚率(59歳以下)69.2%

この数値が示すのは、単なる「低所得」の問題ではない。昭和期の非正規雇用(学生、主婦パート、定年後)が家計の補助や過渡的な状態であったのに対し、現代のアンダークラスは「その低い報酬のみで人生を完結させなければならない」という宿命を背負わされている。

特筆すべきは、この階級において‌‌「次世代の労働力を生み育てるという基本的条件」が欠如している‌‌点である。約7割に達する未婚率は、経済的な困窮が生物学的な再生産の障壁となっていることを示唆している。労働者階級が自らの階級を維持・継承する「社会的再生産(Social Reproduction)」の機能を失うという事態は、日本の歴史上、極めて画期的(Epoch-making)かつ危機的な構造不全である。この「社会の再生産」の崩壊は、国家の存立を揺るがす長期的リスクであり、個人の努力を超えたマクロな要因によってもたらされている。

4. アンダークラス形成を加速させたマクロ要因の多角的分野

アンダークラスの創出は、個人の資質の問題ではなく、社会構造の不可避的な変容の結果である。

第一に、サービス経済化の進展が挙げられる。需要変動の激しいサービス・小売業の拡大は、企業に「調整弁」としての非正規雇用を必然的に要求した。第二に、グローバル化によるコスト競争の激化である。製造業の海外流出と国内部門の徹底したコストカットは、正社員を非正規へと置換する強力な誘因となった。

ここで、歴史的視点から‌‌「昭和のアンダークラス」との比較‌‌を行いたい。戦前や昭和前期にも貧困層は存在したが、その多くは「小作農」や「人力車夫」、「行商」といった、名目上は自営業者(旧中間階級の下層)の形態をとる「擬似的な自営業者」であった。これに対し、現代のアンダークラスは、雇用システムの内側にありながら権利を剥奪された「周縁化された労働者」である。かつて高度経済成長が吸収し尽くしたはずの貧困層が、今や雇用システムの内部から構造的に再生産されているのである。

また、「株主重視経営」への転換と労働規制の緩和(派遣解禁)は、この傾向に拍車をかけた。企業利益が労働者ではなく配当へと優先的に回される構造が定着し、成果主義の導入は「一部の専門職の報酬増」と「現場労働者の賃金抑制」を正当化させた。

この歪みは、マクロ経済において‌‌「格差拡大不況」‌‌という悪循環を招いている。そのメカニズムは「消費性向」の格差に求められる。富を独占する高所得層は「限界消費性向」が低く、余剰資金を貯蓄や投資に回す(物神崇拝的蓄積)。一方で、所得の100%を消費に回さざるを得ないアンダークラスには購買力が存在しない。結果として社会全体の有効需要が停滞し、経済全体が収縮するのである。

5. 結論:格差社会の本質的弊害と連帯の再構築

本報告書が提示した分析の帰結として、現代日本の格差社会の本質的弊害は、経済的不均衡のみならず、‌‌「社会の分断と連帯の喪失」‌‌にあると断じる。

富の蓄積自体を目的化する「物神崇拝」が蔓延する一方で、社会の底辺では再生産の基盤が崩壊している。このような極端な分断は、他者を自分と同じ人間として認識できなくなる心理的乖離を招き、犯罪リスクの増大や政治の富裕層偏重といった民主主義の危機を顕在化させる。

日本がこの「社会の自殺」とも言える状況を回避するには、既存の対立軸を超えた新たな連帯が不可欠である。ここで希望となるのは、伝統的な共同体や家族の安定を重んじる‌‌「伝統的保守層」と、人権と平等な生存権を掲げる「革新層」‌‌の戦略的一致である。保守にとってアンダークラスの放置は「伝統的家族観の崩壊」であり、革新にとってそれは「基本的人権の侵害」である。

「格差縮小」という共通目的において、これら両極の勢力が連帯し、経済効率至上主義から脱却した社会構造への転換を目指すこと。それこそが、日本が再び持続可能な「社会」として機能するための、残された唯一の選択肢である。

社会学入門:階級の定義と「アンダークラス」が変えた日本の姿

皆さん、こんにちは!今日は「社会学」というレンズを使って、私たちが生きる今の日本をのぞいてみましょう。かつて日本は「一億総中流」と呼ばれ、誰もが「自分は平均的で幸せだ」と思える不思議な国でした。でも今、その足元で巨大な地殻変動が起きているのを知っていますか?

今回は、今の日本を読み解くために絶対に欠かせない「階級」という言葉をキーワードに、社会の真実を情熱的に解き明かしていきます!


1. 「階級」とは何か:経済的地位が形作る現代の身分

「階級」なんて聞くと、昔の教科書に出てくる言葉のように感じるかもしれませんね。でも、これは現代社会を理解するための「最強のツール」なんです。

「身分」と「階級」はどう違う?

江戸時代のような昔の社会には「身分」がありました。武士の子は武士、農民の子は農民。これは宗教や伝統、家柄で生まれつき決まってしまう、自分では変えられない「固定された壁」でした。 しかし、近代になって身分制度がなくなると、人々を分ける基準はたった一つ、‌‌「経済的な要因」‌‌になりました。これが「階級」です。

階級を分ける鍵「生産手段」

社会学で最も重要な指標は、‌‌「生産手段」‌‌を持っているかどうかです。 例えば、パン屋さんを想像してください。

  • パンを焼くための「オーブン」や「お店の建物」を持っている人が資本家です。
  • そのオーブンを借りて、お給料をもらってパンを焼く人が労働者です。

「私は株を持っているから資本家だ!」と思う人がいるかもしれません。でも、少額の投資信託や数株持っている程度では、その配当だけで食べていくことはできませんよね。社会学的な「資本家」とは、‌‌「それを持っているだけで、働かずに生活できる規模の資産(数億円単位の株や不動産など)」‌‌を所有する人のことを指すのです。

【このセクションのまとめ】 今の社会で私たちがどのグループに属するかを決めるのは、家柄ではなく「オーブン(生産手段)を持っているか」という経済的なルールなのです。では、日本には具体的にどんなグループが存在するのでしょうか?


2. 伝統的な「4つの階級」とその特徴

20世紀の半ばから、日本の社会は主に4つの階級で安定していました。それぞれの役割を表で見てみましょう。

現代日本の「4つの階級」比較表

階級名生産手段仕事の内容代表的な職業備考・歴史的役割
資本家階級大量に所有経営判断・資本運用企業のオーナー、大株主利益を独占するトップ層。
新中間階級なし(被雇用)管理・専門的業務課長・部長、医師、教師雇われの身だが、高い「裁量(自分で決める権利)」を持つ。
労働者階級なし(被雇用)現場での現業作業工場の正規社員、販売員20世紀の日本を支えたマジョリティ。
旧中間階級少量保有自営による生産・販売農家、商店主、個人事業主かつては領主に抵抗する勢力だったが、近代では安定した自営業層に。

「新中間階級」という特別な存在

この中で面白いのが「新中間階級」です。彼らは会社に雇われている点では労働者と同じですが、仕事の進め方を自分で決められる「裁量」を持っています。道具の代わりに「言葉」や「知識」を使い、資本家の代わりに現場を管理する、エリート層と言えます。

幻の「一億総中流」

1970年代、日本人のほとんどが「自分は中流だ」と信じていました。

  • 格差が小さかった: 社長と平社員の年収差は、せいぜい10倍程度でした。
  • みんな正社員だった: 非正規雇用は、学生のバイトや主婦のパートなど、人生の「一時期」だけの例外的な存在だったのです。

【このセクションのまとめ】 かつてはこの4階級がバランスを取り、格差も目立ちませんでした。しかし今、かつてないほど「残酷な分裂」が起きているのです。


3. 新たな衝撃:「アンダークラス」の出現と特徴

今、日本の労働者階級が真っ二つに割れ、その底辺に‌‌「アンダークラス」‌‌という巨大な層が出現しています。これは単なる「貧乏」とはワケが違います。

「アンダークラス」とは誰か

彼らは、学生でも主婦でもなく、‌‌「人生の大部分を非正規労働者として過ごす人々」です。かつての貧困(昭和初期など)は、自分の道具を持たない農民や人力車引きといった「旧中間階級のなれの果て」でした。しかし現代のアンダークラスは、「労働者階級の中から、正社員の道が断たれた人々」‌‌として分裂して生まれたのです。

その規模は、今や約890万人。かつて社会の中核だった「旧中間階級(約658万人)」をはるかに上回る、無視できない巨大な勢力になっています。

数値が語る、絶望的な実態

アンダークラスの人々の生活は、あまりにも衝撃的です。

  • 平均個人年収:わずか216万円(正社員の約4割)。
  • 貧困率:37.2%(約3人に1人が、まともな生活が送れない基準以下)。
  • 未婚率(59歳以下):69.2%(約7割が一度も結婚したことがない)。

「再生産」の危機

最も深刻なのは、彼らが「家族を持ち、子供を育てる」という、生物種としての人類が持つべき基本的な条件さえ満たせない状況に追い込まれていることです。次世代を育てる余裕がない層がこれほど増えることは、社会そのものが消滅へと向かう「静かなる崩壊」を意味します。

【このセクションのまとめ】 かつての「中流」から滑り落ち、人間らしい生活の基盤を奪われた890万人の人々。なぜ、日本はこれほどまでに冷酷な社会に変わってしまったのでしょうか?


4. 階級社会が変貌した理由:グローバル化と政策の影

なぜアンダークラスが生まれたのか?そこには、避けられない時代の波と、人為的な「選択」がありました。

マクロな要因(時代の波)

  1. サービス経済化: 飲食店や小売店が増え、忙しい時だけ雇える「使い捨ての労働力(非正規)」が求められるようになりました。
  2. グローバル化: 海外の安い賃金と競うために、企業は「正社員を減らしてコストを削る」という道を選びました。

ミクロな要因(人為的な選択)

さらに、企業や政府がこの状況を加速させました。

  • 非正規は安くていいという「偏見」: 「非正規は家計の足し(学生や主婦)だから安くていい」という古い慣習を、自立して生きる若者たちにも残酷に適用し続けました。
  • 株主重視の「物神崇拝」: 企業は「株主のもの」とされ、利益は労働者ではなく配当へ。お金そのものを神様のように崇める「物神崇拝」が、労働者への分配を止めました。
  • 「手柄」の横取り: 成果主義の名のもとに、現場で実際に価値を作っている労働者ではなく、「新しいビジネスを考えただけ」の管理職や専門職に数億円の報酬が偏るようになりました。

【このセクションのまとめ】 時代の変化と、強者の「権力欲」が重なり、資本家だけが肥え太り、下が切り捨てられる歪んだ構造が完成してしまったのです。


5. 格差拡大がもたらす社会の停滞と未来への展望

「格差が広がっても、自分がお金持ちなら関係ない」と思うかもしれません。でも、それは大きな間違いです。格差は社会全体を沈没させます。

「格差拡大不況」のワナ

お金持ちは、いくら稼いでもすべてを使い切ることはできず、貯蓄に回します。一方で、アンダークラスのような貧困層は、お金がなくて買い物ができません。その結果、社会全体の「買う力」が減り、経済が全く成長しなくなります。 これこそが、日本が30年も停滞している正体です。

社会が壊れるとき

格差が広がりすぎると、人々は「同じ社会の仲間だ」という連帯感を失います。 「あいつらは何億円も持っているのに、自分は明日食べるものもない。それなら……」という絶望が犯罪を招き、社会の契約は音を立てて崩れます。人は自分を人間として扱わない社会を、守ろうとはしないのです。

未来を変える「奇跡の合意」

希望はあります。実は「格差を縮めるべきだ」という一点において、生活の安定を求める「リベラル(野党支持層)」と、社会の秩序と連帯を守りたい「伝統的保守層」は、手を取り合えるはずなのです。 この二つの層が一致団結すれば、政治を動かす巨大な力になります。

結びのメッセージ

現代社会を「階級」という視点で見ることは、誰かを責めるためではありません。今の苦しみが「自分の努力不足」という「自己責任」ではなく、社会のゆがんだ「構造」から来ていることを理解するためです。 構造を知れば、私たちは立ち上がることができます。この不条理な階級社会を変え、誰もが「人間としての基本条件」を享受できる未来を作るのは、他ならぬ、構造を理解したあなた自身なのです。

情報源

動画(37:26)

【日本の新しい階級社会】アンダークラスとは何か?/個人年収は216万円/階級はどのように分けられる?/昭和の格差と令和の格差/橋本健二

https://www.youtube.com/watch?v=5D-rpGx5dkQ

40,000 views 2026/05/30

〈ゲスト〉 橋本健二(早稲田大学教授)

1959年、石川県生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。現在、早稲田大学人間科学学術院教授(社会学)。データを駆使して日本社会の階級構造を浮き彫りにする。また、趣味と研究を兼ねて「居酒屋考現学」を提唱。著書に『新しい階級社会』、『新・日本の階級社会』(ともに講談社現代新書)、『階級社会』(講談社選書メチエ)、ほか。

<聞き手> 丸尾宗一郎 1990年、大分県生まれ。東京大学教養学部卒業後、2012年に講談社に入社。フライデー、週刊現代、現代ビジネスなどを経て、現在、動画事業に携わる。

(2026-06-07)